バブル期に迫る公営競技の売上増
バブル崩壊後、長期にわたり低落を続けていた公営競技の売上は2011年頃からようやく上昇に転じた。
基本的には景気回復の影響とみるべきだが、売上回復の度合いは各競技一律ではない。特にボートレースの伸びが著しい。21年度の売上額は2兆3926億円と、1991年度の2兆2137億円を上回り過去最高の売上となっている。
繰り返し述べてきたことだが、ボートレースがもっともとっつきやすい競技だということは確かにあろうが、それだけではない。
有名タレントを上手く使ったテレビCMの多さは他の競技を圧倒しているし、吉本興業のタレントとのコラボレーションも多い。
また、パチンコ関係のライターにボートレースをアピールさせるなどの手法で、パチンコ愛好者をターゲットにファン増大を狙うなど、他の競技に比べると戦略的に広報活動をおこなってきた成果も大きいだろう。
そもそもボートレースは他の公営競技に比べて開催日数が多い。中央競馬とボートレースは縮小期でも開催日数を減らさなかった。中央競馬の開催日数は77年以来ずっと288日で一定だし、ボートレースも91年度以降もほぼ同じ日数で開催を続けている。
91年度と2010年度の開催日数を比較すると、地方競馬、競輪、オートレースはいずれも約四割減っている。競技場廃止の影響も大きいが、競輪とオートレースでは施行者が開催日数を減らしているのだ。
競輪では1991年12月末に4379人いた選手が2010年12月末には3386人に減っている。さらにその後も減り続け、19年には2190人となっている。グレードレース以外を七車立てとしたのは、選手数の減少によるところも大きい。また、オートレースでは非グレードレースでの二回乗り(一日に二回出走)を復活させている。
競技場の廃止や選手数の減少は、製造業でいえば工場や熟練工の削減にあたる。景気が良くなったからといってすぐに増やせるものではない。あくまで結果論だが、「工場」と「熟練工」を維持したボートレースの成長は当然だろう。
21年度の地方競馬の売上額は9333億円で、1991年度の9862億円に迫る額となった。
91年度は全国30の地方競馬場(うち3場はJRAから借用)で24の主催者が2417日間地方競馬を開催。2021年度は14の主催者が17場(うち、JRAから借用の札幌と中京は長らく開催されていないので、実質15場)で1271日間開催した結果だ。
開催日数はバブル期の52.6パーセントで、売上は94.6パーセントだ。一日あたりの売上は91年度が4億円、21年度が7億3000万円と大きく増えている。
だが、伸び率は主催者ごとに大きな差がある。岩手県競馬組合や石川県・金沢市(金沢)は91年度の売上に届いていないし、特別区競馬組合(大井)も91年度とほぼ同じ水準だ。
帯広市(ばんえい)、高知県競馬組合(高知)、佐賀県競馬組合(佐賀)、千葉県競馬組合(船橋)など、ナイター開催の比率の高いところの伸び率が高い。
「工場」と「熟練工」が減った競輪やオートレースと異なり、地方競馬は競走馬資源という「原材料」供給の問題もある。実はいま廐舎が飽和状態にある地方競馬場が多い。好景気で競走馬を所有したい人が増え、競走馬の生産頭数も増加している(価格も高騰している)のだが、受け入れ可能な廐舎が増えているわけではない。
馬だけではなく、人間の方も深刻な人手不足になっている。北海道では牧場でも門別競馬場の廐舎でもインド人を中心とする外国人労働者がいないと成り立たない状況になっている。全国の地方競馬の廐舎でも外国人廐務員が増えている。