利用率は約4.5%。6か月連続で減少

当初、マイナ保険証を巡って懸念されていたのは、主に「追加費用」と「悪用」というポイントだ。このうち、追加費用は窓口負担が3割の人の場合、マイナ保険証利用で初診6円、従来の保険証なら12円と、あまり大きな金額ではない。

紛失・盗難の場合の悪用についても、カード自体に医療情報が記録されているわけではなく、必要に応じてオンラインで本人確認をする。パスワードもあり、不審な動作が続けばカードに搭載されたICチップが壊れる、といった仕組み自体は銀行のキャッシュカードなどと、それほど変わらない。

それなのに、マイナ保険証の利用率は2023年10月時点の政府発表で約4.5%と、6か月連続で減少している。その理由は、後述する一連の問題による心理的な不安が大きいだろう。

騒ぎが大きくなったきっかけは、今年に入って、マイナ保険証で参照できる医療情報について、別人のものが誤って紐づけられてしまうミスが相次いで発覚したことだった。診察記録などは慎重な取り扱いが必要な情報であり、SNS上で当事者が声を上げ、注目が集まった。

トラブルだらけのマイナ保険証「他人の顔で認証できる」「兄弟の情報が出てきた」… “強引なDX”がもたらした医療現場の不安と混乱「来年秋に一本化で大丈夫なのか」_02
政府によると、2023年10月の時点でのマイナ保険証利用率は約4.5%と発表されている

マイナ保険証の本格運用を開始する前である2021年にも、他人の情報を紐づけるミスが3万5000件判明しており、本格運用の開始は半年延期されている。このときも一斉点検や自動システムによるチェックといった対策をとっていたはずで、SNSで注目が集まる前から政府側も問題を把握していた。

厚生労働省はミスの原因として「紐づけの際のルールが徹底されていないこと」を挙げる。

これまでデータを紐づける健康保険組合などに対しては「氏名」「生年月日」「性別」「住所」の4つの情報で確認することを求めていたが、住所の確認を省くなどの事例があり、誤登録につながった。

一連の問題を受けて、政府は今年6月に「マイナンバー情報総点検本部」を設置。同本部での12月の発表によれば、現在までにマイナンバーに紐づけられた医療や福祉などの情報について8351件のミスが確認された(先行点検分を含めると計1万5907件)。全データは約8200万件を数えるので、割合としてはさほど多くないが、センシティブな個人情報の流出リスクがあるとあっては政府としても悩ましい問題だ。

そのうち健康保険証の情報については、すべてのデータを住民基本台帳と照合して確認する作業も進められている。その結果、氏名などが一致しないケースが新たに約139万件確認されたという報告があった。別人の情報が紐づけられているのは450件程度と推計されており、確認作業の完了は2024年春が目処になる。

健康保険証の廃止後も、最大1年間は現行の保険証が使用可能だ。また、マイナ保険証を保有しない場合には、申請なしでも資格確認書が発行される。政府は国民の不安を拭うことに躍起となっているが、ここまでの事態になってしまえば、先行きは不透明と言わざるを得ない。