食べるものは”吐きやすさ”がすべて
――遠野さんはどのようなものを食べるんですか?
遠野 吐きやすさで食べるものを決めます。吐きやすい順番とかがあるから、そういうものも考慮して。固形物やすごく硬いものなど、吐きにくいものは買わない。本当に虚しさしかない作業です。
――苦しい思いをしても、また食べてしまう。
遠野 お腹が空いて食べるんじゃなくて、もう食べたくないんです。なのに、また「やれ」と悪魔のささやきが聞こえる感覚がある。東日本大震災のとき、あの揺れの最中ですら、過食嘔吐を止められなかったんです。揺れている中で、食べて、食べて、食べて、食べて、泣きながら、地震の恐怖と同時に「自分は何をやってるんだろう」と思いながら、吐いてたんです。
たくさんの人が亡くなっている中、不謹慎なことを言ってるのだとはわかっているのですが……それだけ自分の意志ではどうにもならない病気だということをわかっていただきたくて、今、お話ししました。
――摂食障害の辛いところは?
遠野 日常が普通じゃない。食を楽しめないですもん。友人と食事をして「おいしいね」と言い合う、そのやり取りがどれだけ幸せに思えるか。涙が出そうになります。いいなって思います。普通になりたい、私も。
――摂食障害になったきっかけは?
遠野 母でした。私が15歳の時、思春期で少し体がふっくらしてきた時期に「食べて吐けば太らないのよ」って。どういうふうに吐けばいいかも教えられました。そこから止まらなくなってしまって。20代ぐらいになって、母も摂食障害だったんだと知りました。ある日、お風呂で吐いてるのに気付いて「ああ、母が私を巻き込んだんだ」と。
――吐き方以外に、お母さんから教えられたことは?
遠野 下剤の飲み方。「飲めば痩せる」って言われて。昔は1日に1回あたり、何十錠も飲んでましたね。20代ぐらいまでかな。母は、私が痩せると喜ぶんですよね。
――摂食障害になる原因の多くは、心理面が大きいのでしょうか。
遠野 本来はそうですね。絶対ではないですが、お母さんとの関係でなる方もすごく多いです。直接的な理由が、ダイエットや失恋とかでも、たどっていくと、お母さんとの関係が根深くあるというのはよく聞くお話ですね。