詐欺メンバーとセブ島に旅行に行ったり、食事を楽しんだりしていた
今年11月から行われていた裁判で「詐欺とわかりながら脅されて逃げられなかった」と情状に訴えた熊井被告。しかし、検察側は熊井被告をかわいそうな闇バイトの末端とは捉えずに、自主的に詐欺行為に加担していた側面を強調した。
「まさにAさんとBさんが騙された2019年11月13日に、詐欺拠点がフィリピン当局に摘発され30人以上が連行されています。このときはうまく逃れた熊井被告でしたが、現地で知り合い、交際していた藤田被告とともに、フィリピン国内を転々としながら、かけ子を続けていたんです。本当に逃げようと思えば、監視もなかったのだから逃げられたのではないかと指摘された熊井被告は唯一、証言を拒んでいます」
組織の摘発後にもかけ子を続けていた上、詐欺メンバーとセブ島に旅行に行ったり、食事を楽しんだりしていたと検察は指摘。「脅されて辞められなかった」という熊井被告の主張について「被告人が本件組織から脱退し得ないほどに切迫した状況にあったなどとは到底認められない」と検察は切り捨てていた。
さらに検察は「本件は高齢の被害者らが懸命に貯蓄した老後の資金を奪い、将来に対する不安等、精神的苦痛をも与えたものであり結果は重大。動機は高額な報酬を得る点にあったと認められ、その私利的かつ身勝手な動機に酌量の余地はない」と指摘し、懲役4年を求刑した。そして地裁は2年としたものの実刑判決を言い渡したのだ。
「熊井被告はボランティアを続けながら、Aさんにも被害弁済をしていくと誓っていました。そして藤田被告と結婚して子育てをする未来を描いている。一方の藤田被告も、Aさんへの弁済を誓っています。ずっと留置施設におり子どもの姿をいまだ見られていない藤田被告ですが、罪を償ってから熊井被告と入籍し、子育てをしていきたいと希望しています」
12月7日には藤田被告にも懲役2年の実刑判決がくだった。安易な闇バイトへの参加は、2人の生まれたばかりの子どもにもつらく大きな枷を強いることとなった。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班