CMの多様化で誰もが知るCMがなくなる事態に…
まず一つ考えられるのは、そもそも広告媒体が多様化していることである。
昔は「CM」といえば、それはほぼイコール「テレビCM」を指したが、現在は動画サイトもあればタクシー広告もあり、それぞれの媒体でターゲット層にあったCMを打っている。
またテレビCMといっても、地上波放送だけでなくTVerなど配信サイトで流れるものもあり、老若男女みんなが共通して見るCM自体が減っているという事情は確実にあるだろう。
タクシーに乗らない人は「福岡みなみのテレシーの広告」とか「霜降り明星のb→dashの広告」などわからないだろうし、YouTubeでよく流れる「ゾンビとパズルの広告」も有料会員は見かけることがない。
逆にテレビでは飽きるほど流れているのに、その他の媒体ではほとんど見ないようなCMもあるだろう。
誰もが認知するCMというのは、多種多様な媒体に出稿されているものに限られ、その数は決して多くない。
それに比べるとスポーツや芸能ニュースはいろいろな媒体で取り上げられるため、生まれた言葉が流行語として広まりやすい。
キャッチコピーより商品名とサービス名重視のCM戦略
また、CMがより短時間で直接的にメッセージを伝える傾向も一因となっている。
現在、動画サイトなどでは15秒でも長いと感じる人が多く、5秒のCMも多い。そしてタイパ重視の世の視聴者は回りくどい説明よりも端的に1秒で理解できるシンプルなものを求めるように変わってきている。
そんな中では短い時間で効率的に伝えたいことをギュッと詰め込まなくてはならない。キャッチコピーなどよりも商品名やサービス名を伝えることに力を注ぐことになる。
脳内に残ってる最近のCMフレーズを思い返してみても「ビズリーチ!」「URであーる」「ペイペイ! ペイペペイペイ!」「ハズキルーペ! だーいすき」と、企業名や商品名を叫んでいるものばかりだ。
さらにいえば「仕事探しはインディード、バイト探しもインディード(「幸せなら手をたたこう」の節で)」「LINEモバイル LINEモバイル(「いい湯だな」の節で)」というように既存の有名曲の替え歌のパターンも多い。
昔はCMソングからもヒット曲が大量に生まれていたのに、今は「誰もが知っている曲に企業名を乗せるのが一番わかりやすい」となっているのは何とも寂しい。
数少ないキャッチコピーがしっかりあるCMも「おつかれ生です」など、ダジャレに頼りがちだ。もちろん昔からCMダジャレは数限りなく作られているが、これも替え歌と同じで、既存のフレーズに企業名やサービスの特徴を乗っけているだけとも言える。