親が覚醒剤中毒で周りに言えないというケースも

相葉 実はうちも不登校の弟がいて、石井さんの本を読んだときに「あ、その介護もけっこうしてたな」と気づいたんですよ。これだけヤングケアラーについて描いている私でも、「オムツを替えるだけが介護じゃない」ということは飛んでしまいがちなので、まったく関係のない生活をしてる大人なら、なおさらですよね。

『ヤングケアラー みえない私』より ©相葉キョウコ/集英社
『ヤングケアラー みえない私』より ©相葉キョウコ/集英社

石井 ヤングケアラーと聞くと、病気の親や祖父母の介護というイメージが強いと思いますが、割合としては親の精神疾患や精神障害が多いと思います。その中で大変だなと感じるのが、親が幻覚を見て暴れるような重い統合失調症のケースです。こうなると、子どもが親とちゃんとした関係性を築くことは不可能です。

でも、それは虐待には該当しないし、がんのような一般的な病気とは違うので、下手すればヤングケアラーにもなりません。もっとひどい状況が、親の覚醒剤中毒、覚醒剤中毒の後遺症です。バレたらその親が捕まってしまうので、子供は周りにも絶対に言えないんですね。ヤングケアラーには、こういった極端なケースもあるんです。

だから、社会全体がヤングケアラーという言葉をどこまで広くとらえるか、あるいは伝えていくかという点で、今後の課題はまだまだあるんじゃないかと思います。

後編へつづく

《後編》「なんで親戚が金出さないの? バカじゃん?」という友人のほうがありがたい場合も…あたりまえの日常がなくなっていくヤングケアラーに行政も学校も近隣も介入できない問題点《石井光太×相葉キョウコ》

取材・文/森野広明 撮影/高木陽春