熊谷俊人千葉県知事の就任でキョンの駆除へ本腰

住民の生活を守るために、駆除はいたしかたない部分はある。しかし、前編でも触れたとおり、増加数に比べて捕獲が追いついていないのが現状だ。

いすみ市で狩猟体験ツアーを行う合同会社「Hunt+」代表、石川雄揮氏は、ハンターの数や若手の少なさを嘆く。

「いすみ市猟友会80名の会員の中で、市からの依頼で有害鳥獣を捕獲する『有害鳥獣駆除隊』は30代が3、4人いるだけで、ほとんどが60代の方です」

「Hunt+」代表、石川雄揮氏(撮影/集英社オンライン)
「Hunt+」代表、石川雄揮氏(撮影/集英社オンライン)

そんな中、県内のキョン根絶に本腰を入れたのが千葉県だ。千葉県君津市でキョンをはじめとしたジビエ専門店「猟師工房」を営む原田祐介代表は言う。

「千葉県はキョンの食肉化にはこれまでずっと否定的でしたが、2021年に初当選した熊谷俊人千葉県知事が今年7月に、有害鳥獣対策における幅広い担い手を確保するために『千葉県有害鳥獣捕獲協力隊』を募集するなど、対策にも積極的です。

キョンの肉もふるさと納税の返礼品とするなど、食肉化への考え方も変わりました。キョンって、ローストやコンフィとして食べてもおいしいし、アヒージョにも合うんです」

千葉県環境生活部自然保護課鳥獣対策班は言う。

「あくまで、我々としては『キョンの肉はおいしい』などと二次的な価値をつけて、それを産業として定着させずに根絶することが第一優先。ふるさと納税の返礼品にしたのは、命をいただいた以上、それを有効活用したいと始めたことです」

「キョンの肉はおいしいですよ」(「猟師工房」代表の原田祐介氏。撮影/集英社オンライン)
「キョンの肉はおいしいですよ」(「猟師工房」代表の原田祐介氏。撮影/集英社オンライン)
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キョンの成体は7キロから12キロほど。そこから取れる食肉は2キロほどとかなり少なく、もともとの生息地の台湾では高級食材とされている。日本でも邪馬台国の時代からキョンの皮が工芸品に使われているなど、日本人とは密接な関わりのある生き物だという。

その歴史の重みに触れつつ、今後も増殖防止に励んでもらいたい。

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取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班

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