YouTuberは主人が喜ぶ芸をするイヌ

また、自己家畜化が進んでいくなかで、「面白さ」という新たな軸に至上の価値を見出す人の割合も増えてきている。最たる例がYouTuberの台頭だ。

人気が出る動画の共通点は、とにかくウケることだろう。チャンネル登録者数が増え、動画の再生回数が増えれば収益に繫がる。面白ければいい、目立てばいい。それ以外のモラルやルールは知ったことかと極端に走った人々が、「迷惑系」「暴露系」と称されるYouTuberだ。

そうしたエンターテインメントは賞味期限も短い。動画を観て刺激を受けても、あっという間に消費されて消え去ってしまう、

ほとんどの場合、YouTuberが撮るのは自身や自分のペットの動画であり、そこには「どうすれば視聴者にウケるか?」という視点が必ずある。この構図は「主人に一番好かれる芸はどれだろう?」という発想になっている飼い犬と同じだろう。主人の目を意識することで、自分の行動を選び取っているのだから。

YouTuberは主人が喜ぶ芸をするイヌ? SNS上で凶暴化する日本人を増やしている、「自己家畜化」という歪んだ進化_3

そうなると、思考や行動の軸も「自分」ではなく「他人」になっていく。面白い奴、目立つ奴こそが偉いのであって、隠れて善行を積むような感性は無意味としか思われない。「誰が見ていなくても、お天道様が見ているはずだ」「誰からも褒められなくても自分が楽しんでいるからいい」という感性は、もはや過去のものになっていく。

誰かに褒められたい、注目されたい、認められたい。そうでなければ人生の手応えが感じられない。もはやこの境地こそが、精神的な自己家畜化が行き着く最終地点である。

少なくとも、世の中の全体がそうした価値観へと重心を移していることは、この社会で生きる人全員が自覚しておいたほうがいい。