新たな主人とエコノミックアニマル化
話をいったん戦後に戻そう。
連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本を占領下においたのは、1945年から1952年までの7年間だった。
この間、GHQは憲法改正や五大改革(女性参政権の付与、労働組合の奨励、教育の自由主義的改革、秘密警察の廃止、経済機構の民主化)の指令を出し、特別高等警察、治安維持法、治安警察法などを廃止した。言論や労働運動においても日本人は自由を取り戻したのだ。
やがて1955年頃から高度経済成長期に突入すると、経済上の利潤追求を第一として異様なアクティブさで活動するようになった日本人は、欧米人から「エコノミックアニマル」との蔑称で呼ばれるようになる。
これは国にとっては経済が、個人にとっては仕事が、新たな「主人」になったという見方もできるだろう。ともあれ高度経済成長期の日本における仕事とは、「みんなと同じこと」をすることであった。
工場で製品を大量生産するにあたって、個性やオリジナリティは不要だ。それよりはみんなと同じように、同じものを作れることに価値があった。