茂木氏続投の裏に総裁選不出馬の密約

この極端な人事をどう読み解けばよいだろうか。

そのヒントとなるのが来年秋に予定されている自民党総裁選である。岸田首相にとって最悪のシナリオは、来年の自民党総裁選で自身が総理総裁の座から引きずり降ろされることだ。

岸田政権は夏以降、内閣支持率が不支持率を下回ることが常態化しており、このままの状態で総裁選を迎えてしまうと、「岸田では選挙は戦えない」と党内で反旗を翻されてしまう恐れがある。

もちろん、これから岸田首相が強いリーダーシップを発揮して、高い支持率を維持していけば話は別だが、政治はそううまくはいかない。そのため、支持率が低い状態で総裁選に突入しても乗り切れるよう、予防線を張る必要があるのだ。

内閣改造・自民党役員人事を行った岸田首相(本人Facebookより)
内閣改造・自民党役員人事を行った岸田首相(本人Facebookより)
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予防線は大きく次のふたつ。
ひとつは総裁選のライバル候補の動きを封じ込めること。もうひとつは総裁選を迎える前に解散総選挙をやってしまい、選挙への不安をなくすことだ。
今回の内閣改造は、その両方をにらんだ人事となっているといえるだろう。

前者の“ライバル候補の封じ込め”が体現されたのが、茂木敏充幹事長の続投人事だ。
永田町関係者によると、茂木氏は自民党ナンバー2で党の金を左右できる幹事長ポストの続投をかねて希望していた。
幹事長という要職を続けて政治家として力をつければ、岸田首相のライバル候補として立ちはだかる可能性もある。

幹事長を続投となった茂木氏(本人Facebookより)
幹事長を続投となった茂木氏(本人Facebookより)

今回、この茂木氏の要望を岸田氏はのんだわけだが、実はその裏には「茂木氏が来秋の総裁選には出馬しない」という密約が結ばれているといわれている。茂木氏が幹事長を続けることを許す代わりに、岸田氏は次の総裁選の不安要素をひとつ取り除いたわけだ。
実際、茂木氏は9月5日の会見で、来年の総裁選の対応について問われた際に「幹事長としてこの内外の課題が山積するなかで政権をしっかり支えていく、これが私の仕事だと思っている」と答えている。