音楽芸能の「普通」をアップデートしていきたい
僕は、BMSGをスタートアップ企業だと捉えています。スタートアップは、そもそも社会が持つ課題に対して、自分たちができることで解決するために始めるものだと思っており、僕らは、音楽芸能のスタートアップですから、自分たちで解決できる可能性のある音楽芸能の課題に向き合っていこうとしています。
BMSGを立ち上げて以降、様々な人と話すなかで感じるのは、あまりにも自分にとっての「普通」、つまり、音楽マネジメントとか音楽レーベルの「普通」が世の中にまだ知られていないこと。また、ファンの側も「どうしてこうなっているんだろう」を考えずに、「アーティストのため」を掲げて応援していると感じることもあります。
それらに対して、僕らが世の中の音楽芸能の「普通」をアップデートしていきたいという気持ちが強くあります。
例えば、音楽業界のビジネスモデルが、いまだに業界がバブルに沸いた30年前の成功体験を引きずったままであり、特にアイドル的なアーティストの場合、CD偏重の「売る仕組み」に頼りすぎていることもそうです。簡単に言えば、ファンも「たくさん買うこと」を応援の形と捉えていることが多いですよね。
もちろんたくさん買っていただくのはありがたいし、ファンの立場からすれば「所有する」楽しみもあります。けれども、そこに無理やりストレスが生まれるようでは、本末転倒です。要は歪(いびつ)なシステムの上に成り立っている応援の形と言えるでしょう。だったら、やっぱり直していったほうがいい。
アーティストに対しては、例えば前述の「クオリティファースト」「クリエイティブファースト」「アーティシズムファースト」の3つを基本に、自身がステージに立って表現する覚悟を持ってほしい。世に出ればいいこと悪いこと、いろいろ評価されるのがアーティストという仕事です。さらに、忙しさに心が折れそうなこともあれば、何年も続けていれば、レコーディング、リリース、ツアーなど、意外に単調であることにも気づいてくる。
だからこそ、「自分がなぜこの活動をしているのか」という軸と覚悟を持ってもらう必要があります。
そうした、もはや形骸化している音楽業界の「普通」を変えながら、僕らが目指しているのは「世界」です。
BMSG設立時に掲げたその挑戦はまだ始まったばかりですが、1つひとつのリリースや施策をはじめ、BMSG全体としてのフェス開催、はたまた様々な外部とのプロジェクトを通し、トライ&エラーを重ねるなか、その夢に少しずつでも近づけている手応えを感じています。
#2に続く