殺られる前に殺る!

――そしていよいよ2023年の4月21日、格闘技者・宮原華音として後楽園ホールのリングに立ちました。

ラウンドガールとしては何度も経験した場所なのでホーム感は強かったのですが、試合用のコスチュームに着替えて、リングに向かう通路を歩いているときは、冷静な自分とガチガチに緊張している自分が揺れている感じでした。

――スイッチが入ったのは、名前をコールされたときですか。

リングインしたときですね。かわいくとか笑顔でとか、ラウンドガールのときの思いはどこかに吹っ飛んで、“絶対勝つ!”という、ただそれだけを考えていました。

――試合は、宮原さんのワンツーで始まりました。

大樹さんから、「宮原さんは空手で戦ってきた経験がいっぱいあるから、その感に従って戦えば大丈夫」と言っていただいたので、自分の武器であるスピードを活かして、先にパンチを出そうというのは決めていました。ただ、相手の蹴りが痛くて、精神的にはギリギリでした。

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ジムでスパーリングする宮原さん ミットを持つのはターゲットジムの宮城大樹さん
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――結果はミドルキックから、右フックを何度も相手の顔面に叩き込み、1R39秒、鮮やかすぎるほどのKO勝ちです。

試合の大まかな流れだけを追うとそうなるんでしょうけど、実際は違います。相手の膝蹴りを喰らった瞬間、もうめちゃくちゃ痛くて、このまま反撃しないと殺されちゃうと思いました。

――殺られたくなければ、殺るしかない!?

そうです! 恥ずかしくない試合をしたいとか、かっこよく勝ちたいとか、そういう気持ちは微塵もなくなっていて、「これは殺し合いだ」と(笑)。殺らなきゃ殺られるという、シンプルな気持ちで戦っていました。


――最後にひとつ、お聞きします。もう一度、選手としてリングに立つという気持ちは持っていますか。

今は、9月からスタートしたテレビ朝日の『仮面ライダーガッチャード』のことしか頭にありませんが、もしも撮影がすべて終わって、「もう一度」というオファーをいただいたときに、自信があったら、そのときはもう一度選手として、という気持ちはあります。

取材・文/工藤晋  撮影/松木宏祐 スタイリスト/木村美希子

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