規則正しい生活で育つ「からだの脳」
脳育ての最初のステップである「からだの脳」は、規則正しい生活と睡眠により育てられます。
しかし、世界的に見て、日本人の睡眠時間は圧倒的に不足しているのが現状です。
17歳から30歳までを対象とした比較では、日本人の平均睡眠時間は、6時間12分(男性)、6時間9分(女性)で24カ国中最短でした(Arch Intern Med.2006;166:1689-1692)。
もちろん、子どもたちも例外ではありません。日本の小学生の平均睡眠時間は、低学年(1、2年生)の平均は9時間9分、中学年(3、4年生)の平均は8時間51分、高学年(5、6年生)の平均は8時間24分と、学年が上がるにしたがって加速度的に短くなっています(「日本の子どもにおける睡眠習慣/睡眠障害と感情/行動の問題との関連性」SciRep11、11438〈2021〉竹島正人、太田洋、細谷哲ほか)。
こちらのグラフは、子どもの健全な発育に必要な睡眠時間を研究したデータです。小学生(6歳~12歳)に必要な夜間の睡眠時間は約10時間、中学生(13歳~15歳)では約9時間となっています。日本人の小学生の平均睡眠時間が8時間台だということを考えると、全く足りていない状況です。
人間は夜行性ではなく、「昼行性」の動物です。太陽が昇る時刻に起き、太陽が沈む時刻に活動を終えて眠りにつくのが、生理的に最も適した生活リズムとなっています。
朝5時から7時の間に太陽の光を浴びると、脳内に「ハッピーホルモン」であるセロトニンが盛んに分泌されます。セロトニンが不安を取り除き、明るく前向きな気持ちにさせてくれます。さらに、朝しっかり目覚めた脳には「元気ホルモン」と呼ばれるコルチゾールも多く分泌されます。コルチゾールは代謝を促進し、免疫力を高める働きをしてくれます。
太陽の光をしっかりと浴びて日中活動すると、15時を過ぎた頃から脳内でメラトニンが多く分泌されるようになります。メラトニンは体温を下げ、筋肉の緊張を緩めるのが役割です。太陽のリズムに従って生活をすれば、本来、私たちのからだは自然に夜眠くなるようにできているのです。
睡眠時間が少ないということは、太陽のリズムに逆らって生活しているということ。特に小学生のうちは、10時間は無理でも、最低限9時間の睡眠は確保するようにしてください。「夜の時間」が睡眠時間ですので、私たちは、就寝時刻は21時まで、起床時刻は6時まで、を推奨しています。
必要な睡眠を確保すれば、脳は必ず育つのです。