ご機嫌取りに子どもを利用する
精神的に未熟な親にもさまざまなタイプがあるが、子どもに孤独や不安な思いをさせるのはいずれも同じだ。愛情を与える方法は基本的に1つだが、子どもが愛情を求める気持ちを台なしにする方法はたくさんある。
精神的に未熟な親は、その未熟さのタイプに応じて4つにわけられる。どのタイプも、形はちがえど子どもの気持ちに鈍感で、不安をもたらす。
すべてのタイプの根底には精神的な未熟さがある。いずれも傾向として、自分のことしか考えず、やたらと自己評価が高く、精神的に頼りにできない。
また、わがままで無神経、親密になるための能力がとぼしい、といった特徴がある。一様に不適応な対処戦略で現実に対処するのではなく、現実をゆがめる(ヴァイラント、2000年)。
そしてどのタイプも、自分が機嫌よくいられるために子どもを利用し、しばしば親子の役割を逆転させ、有無を言わせず子どもを大人の問題に巻きこむ。
加えて、他者の感情に共鳴する力がとぼしい。相手の心の境界線を平気でずかずか越えていくか、まったくかかわろうとしないという、両極端な問題も抱えている。
ほとんどのタイプが苛立ちに対する耐性が低く、自分の望みをかなえたければ、言葉でのコミュニケーションよりも精神的な駆け引きをしたり、相手を脅したりする。どのタイプも、子どもを独立した個人とみなすことを拒み、あくまでも自分の欲求にもとづいて自分にしばりつけておく。そしてすべてのタイプで、子どもは最終的に「自己喪失」(ボーエン、1978年)を感じるようになる。
各タイプについてみていく前に、かつての研究――多様な子育てのタイプが乳児の愛着行動の質におよぼす影響――についてかんたんにおさらいしておこう。