BLドラマが先鞭をつけた“ファンベース”戦略
だが、数少ない先行事例から考えても、“ファンベース”戦略の波は確実にやってくると予測する。では、日本のドラマで“ファンベース”が定着するには何が必要なのか。その鍵は2つある。
1つめの鍵は、近年のBLドラマの成功だ。日本ではドラマ単位のファンミーティングは少ないと先述したが、その少数の事例がBLドラマである。昨年、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系、以下『チェリまほ』)がBlu-ray発売を記念し、購入者限定のオンラインイベントを開催。
今年の5月17日には『美しい彼』がDVD・Blu-ray BOX購入者を対象とした200名限定のイベントを行った(同イベントはオンラインでも実施)。さらに海外に目を移すと、タイの人気BLドラマ『2gether』が出演者による『2gether Live On Stage』というファンミーティングを決行。これは出演者たちが歌って踊るコンサート形式のもので、全世界に向けてオンライン配信された。
熱烈なファンがつきやすいBLドラマは“ファンベース”と相性が良く、ブレイク俳優の宝庫ともなっている。作品にとっても演者にとってもwin-winで、かつビジネスとしての成功も見込めるため、ファンミーティングなどが成立しやすい土壌ができているのだ。
固定のイメージがつくことは確かにデメリットもあるが、出演者がいつまでもその作品や役を愛し、折にふれて語ってくれることは、ファンにとっては無上の喜び。顧客ロイヤリティを高める有効な手立てにもなる。
実際、『チェリまほ』も『美しい彼』も深夜ドラマから劇場版公開という道を切り開いた。強いファンダムの構築が、続編や映画化といった新たなキャッシュポイントの創出につながるのだ。BLドラマが築いたこの成功事例を他ドラマに横展開することは十分に可能だろう。