陸上自衛隊にいる約2000人の准看護師はほとんど“ペーパー看護師”
自衛隊中央病院高等看護学院は渋谷近傍のため人気があり、以前は倍率が64倍と狭き門であった。現在は所沢の防衛医科大学校にて看護師が養成されるため、地域的な魅力がない。
償還金制度が決定的となり入学希望者が減少しているようだ。
一般社会では筆者の修得したMOT(技術経営修士)のように実務経験を大学卒業相当と見做し、夜間の通学で学位を取得する制度が整えられている。
防衛医科大学校の看護師養成部門の一部を三宿駐屯地に設け、陸海空と救命救急士合わせて全国に3000人いる准看護師を部隊勤務のペーパー看護師状態から自衛隊病院勤務に移して看護師不足を補完、看護官には、勤務しながら学位を取得できる制度を設けるべきである。
他人との差は必ず人間関係に歪みを生じさせる。それが本来のあるべき姿から逆転しているのであればなおさらだ。
国土防衛とは架空の数字を発表し能力を誇張することではなく、持てる能力を効率的に運用して行うものだ。コロナ禍により、自衛隊に部外の医療従事者の動員は不可能であることが露呈した今、現有の人的資源を有効活用する改革をすべきである。
陸上自衛隊には約2000人の准看護師がいるが、こちらは部隊勤務が主であり、准看護師免許取得前の病院実習以来何十年も患者を看たことがない者もいるほどのペーパー看護師である。
陸自では衛生学校に入校することもなく統一された教育を受けない准看護師が大半だ。
また、600人ほどの救急救命士もいるが、こちらは准看護師免許取得者の中から養成されるため、看護師も兼ねている。ところが、救急救命士も准看護師同様に部隊勤務が主で臨床経験はほとんどない。
救急救命士から養成される第一線救護衛生員も同様だ。現行では、第一線の医療従事者が何種類もあり複雑すぎる。准看護師に統一して同じ技術を備えた隊員の数を揃えるべきだ。
文/照井資規
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