演技が下手すぎたから、今がある
――奏音とご自身は似ているとのことですが、役作りという意味では、素の部分も出したという感じですか?
そうですね。今回はそうしたほうが、伝えられるものが増えるのではないかという気持ちで、これまで演技としては見せなかった表情も積極的に出してみました。
――たとえば?
照れまくっている顔とか、オジサンみたいにニヤけるとか(笑)。人前でこんな表情をしたら恥ずかしいと思っていた部分も、怖がらずに!
でも、自分に近いキャラクターを演じることには危うさもあると感じましたね。自分と全く違う役は、客観的に、理論的に演じ方を考えていけますけど、似ているとその部分が疎かになってしまうかもしれないと思ったので、逆にひとつひとつ監督に相談しながら演じました。
――岡本さんは12歳の時にモデルとしてデビューされましたが、俳優というお仕事に興味を持ったのは?
中学生の時です。当時所属していた事務所で演技のレッスンがあったのですが、あまりにも下手くそで(笑)。でもそれで逆にやってみたくなったんです。だって、演技ってどうやれば上手になるのかわからなくて…。
たとえば勉強や習い事だったら、反復練習をするとか方法論があって、ひとつずつ階段を上っているという実感があるけれど、演技はどうやって取り組めばいいのかが、よくわからない。あまりにもわからないことに魅力を感じて、やってみたいと思いました。
――それから20年が経った今、演じることの魅力は?
価値観が広がって、自分が豊かになることですね。他人を演じることによって、自分とは違う考え方や行動を受け入れられるようになるし、改めて自分自身を見つめることになる。
許容できる世界が広がって、自分と他者をつなぐ糸がどんどん増えていくような感覚があります。そして、みんなで作り上げた作品を、お会いしたことがない視聴者の方が観てくださり、笑ったり泣いたり、記憶に残してくださったりする。本当に幸せなお仕事だと思っています。