私生活では思いきり不器用です
──お話を聞いていると、常に完璧を目指していらっしゃって、「隙がない!」と思ったのですが、苦手なことはあるんですか?
ありますよ。まず僕は球技が苦手です。だから球技の映画に選手役で出演することになったら、練習期間を1〜2年もらわないとできないかもしれないです。とにかく不器用なんです。そのことを感じさせないために、準備期間を怠らないだけ。普通にやったら、それこそポンコツレベルです(笑)。ひとつのことに集中しがちなので、財布や携帯など忘れ物をすることも多いんです。
──意外です!
そのときやるべきことしかできないので、撮影現場でものめり込んでしまうことが多くて。そうなると周りは話しかけにくいらしく、映画『ヴィレッジ』のときは、藤井道人監督に「流星は入り込んじゃうと話かけられなくなるから、今回はそういうのやめてね。ちゃんとコミュニケーションをとって一緒に作り上げていきたいから」と言われました。
ふたつのことを並行してできないんです。器用になりたいなと思いつつ、これが自分だから、しょうがないか、とも思っています(笑)。
──私生活で影響は?
高校時代の友達と仲がいいのですが、彼らには“頑固”と思われているんじゃないかな。例えば「遊びに行こう」と誘われて約束をしたのに、誘ってきた友達が「彼女に呼ばれたから行けなくなった」と言ってきたら、もうダメですね。「お前が誘ったんじゃん。それおかしいでしょ!」みたいになりがちです(笑)。
──約束は守ろうよ、と。
友達の誕生日を午前0時に祝おうと集まる約束をしていたのに、1分遅れてきてヘラヘラしていた友達に「なんで?」と詰めたこともありました(笑)。今思えば、たったの1分遅れただけなのに。ちょっと硬すぎるのかなと思いますが、仲のいい友人たちは、そんな僕に慣れているので「はいはい」と受け止めてくれます。
──そういえば横浜さんは朝が苦手と聞いたことがあります。
いつも寝るときは翌日の服を着て寝ています(笑)。出発5分前に起きて、顔を洗って歯を磨いて即出かけられるように。本当に朝が苦手なので、そこまでしないとダメなんです。
ルーティーンはないけど、自分のペースが崩れると頭が真っ白になることもあります。いつもと違うことが気になってしまうんです。私生活でもかなり不器用だと思います。
──最後に、格闘技への情熱を注いで演じ切った映画『春に散る』を見た感想をお願いします。
試写を見たあと、「133分の長尺を感じさせない映画に仕上がったね」と佐藤浩市さんと話しました。ボクシングのシーンも見応えがあり、満足できるものになっていたのでうれしかったです。
リアリティを追求したので激しい打ち合いや流血シーンもありますが、仁一と翔吾の人生を懸けたリベンジが描かれ、ドラマ性も高い作品なので、きっと気に入っていただけると思います。ぜひ見ていただきたいです。
取材・文/斎藤香 撮影/石田壮一 ヘアメイク/永瀬多壱(Vanites) スタイリスト/伊藤省吾(sitor)
横浜流星 よこはま・りゅうせい
1996年9月16日生まれ。神奈川県出身。2011年俳優デビュー。2019年ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS)の好演が話題に。第100回ドラマアカデミー賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。2021年には『線は、僕を描く』『アキラとあきら』『流浪の月』『嘘喰い』などの演技で第14回TAMA映画賞最優秀新進男優賞、第47回報知映画賞助演男優賞、第46回日本アカデミー賞優秀俳優賞を受賞。近作は『ヴィレッジ』(2023)。最新作は主演映画『MINI』「MIRROR FILMS Season5」(2024年公開予定)。2025年は大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜』(NHK)に主演。蔦屋重三郎を演じる。
『春に散る』(2023)上映時間:2時間13分/日本
元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)は40年ぶりにアメリカから帰国。居酒屋でトラブルに巻き込まれ、チンピラと勘違いしてある青年を殴ってしまう。殴られた黒木翔吾(横浜流星)は仁一のパンチを浴びて、元ボクサーの血が騒ぐ。「もう一度ボクシングをしたい。教えてくれ」と懇願された仁一は、翔吾とかつての仲間(片岡鶴太郎、哀川翔)と共に、一度は諦めたボクシングの世界に人生を懸ける決意をする。
8月25日(金)より全国ロードショー
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/harunichiru/
©️2023映画『春に散る』製作委員会