ボクシングのプロテストを受けた理由

「険しい道の方が絶対楽しい」という横浜流星のストイックさと、「翌日の服を着て寝るほど朝が苦手」という不器用さとのギャップ。「自分のペースが崩れると頭が真っ白になることも」_3
©2023映画『春に散る』製作委員会

──映画のハイライトは、やはりボクシングシーンです。あそこまで本格的に仕上げるのは大変ではなかったですか?

大変でしたが、やるからにはプロのボクサーに見せても恥ずかしくないシーンにしたかったので、かなりこだわりました。ボクシング指導と監修を担当してくださった松浦慎一郎さんに「今までにないボクシングシーンにしたいんです」とお願いをして、徹底的にトレーニングをしました。

昨年の4月から半年間練習を積みましたが、最初は動きに空手の癖が出てしまって。そこを松浦さんの指導のもと、修正しながら力を上げていきました。

──トレーニング期間は、私生活にも変化があったのでしょうか?

まず食生活が変わりました。格闘家の友人に「どんな食事をしているの?」と聞いてアドバイスをもらって、玄米、ゆで卵、鶏の胸肉、ブロッコリーを食べるようにしました。好きなものを好きなだけ食べてしまうと体が変化するので、我慢しました。

劇中に計量シーンはないのですが、試合のシーンの前日はフェザー級のリミット体重57.15kgに合わせて調整しました。選手の気持ちになるために、ボクサーと同じ状況に自分を追い込んで試合に臨みました。

──横浜さんは撮影後、ボクシングのプロテストに挑戦。見事合格したというニュースには驚きました!

ボクサーとして認められたいという自分の気持ちはもちろん、映画への責任感もあってプロテストを受けました。芝居はフィクションですが、その中に“本物”を入れ込みたかったんです。僕がプロテストに合格することで、この映画のボクシングが本物であることの証明になります。6月12日にプロテストに合格し、C級ライセンスを取得できたので、ホッとしています。

「険しい道の方が絶対楽しい」という横浜流星のストイックさと、「翌日の服を着て寝るほど朝が苦手」という不器用さとのギャップ。「自分のペースが崩れると頭が真っ白になることも」_4

──横浜さんはドラマ『DCU』(2022/TBS)でダイバー役を演じたときは、スキューバーダイビングのライセンスを取得しています。役作りも含め、何事も突き詰めていくタイプなのでしょうか?

やるからには突き詰めたいという気持ちは強いです。ボクシングもダイバーも演出やカメラアングルで本物のように見せることは可能だと思います。でも自分は演じる役の気持ちになりきりたい。少しでもリアルに近づけたいので挑戦しました。それが自分の芸能活動や人生につながると思うので。

──まさに役を生きようとしているんですね。

ボクシングのプロテストでも、対戦相手は「この世界で飯を食っていくんだ」という覚悟で挑んでくるし、本気で僕を倒そうと全力でぶつかってきました。その大きな力を受け止めたことは自分にとってすごい経験でしたし、何より後楽園ホールのリングに立てたこと、あのときの雰囲気、あのとき感じた思いは、絶対に消えない。今後に生きると思っています。

──ハードな険しい道を選ぶタイプなのですか?

そのほうが絶対に楽しい。やはり人生は一度きりですし、今後何が起こるかわからないから後悔したくないんです。そう思ったら、やっぱり険しい道を選んで突き進んでいきたいです。