この1年間で実質賃金は約8万円減少

――業績の良い大手企業が思い切った賃上げを先行発表したことで、賃上げへの期待感は高かったものの、結果的に国民はおおいなる肩透かしを食らったということになりました。この状況に今後、変化が生じるとお考えですか?

まだわかりません。ただ、役所の説明がふるっているのです。「5月以降を注目してください」って。4月に賃金が上がらなかったから、5月以降に上がるかもしれないと言っているわけですが、これは欺瞞に満ちています。

公的年金生活の方には4月15日に2ヵ月分の年金が、68歳以上の方には1.9%増で振り込まれています。ただ、これも物価上昇率より低い伸びなので、実質目減りとなります。しかし、公的資金受給者以上に、会社ワーカーの人たちは割り負けているのです。

日本人の実質賃金はこの1年間で約8万円も減少していた! インフレ下、国民の8万円はどこに消えたのか?_2

6月6日、厚生労働省が給与総額に物価変動を組み込んだ実質賃金は、1年前より3.0%減って、これで13カ月連続のマイナスと発表しています。でも、実質賃金のマイナスが年間3%と大本営が発表しても、これがどういうことなのか、一般の人はピンとこないですよね。そこで国民一人当たり、実質賃金がどのくらいマイナスになったのかを計算したところ、7.9万円でした。要はこの13カ月間で国民ひとり当たりの収入が、8万円近く目減りしているわけです。

ちなみにコロナ禍の2年間においてはトータル1万円のマイナスでした。したがって、この13カ月間の間に、コロナ禍2年間に目減りした金額の8倍もマイナスが増えていることになります。