このところのバブルはシンガポール経由の中国マネー
外資の土地買収の問題で、倶知安・ニセコは別格である。
買収面積は公表されているだけでも、倶知安町75件・670ヘクタール(東京ドーム約143個分)、ニセコ町76件・299ヘクタール(同約64個分)(出典 北海道庁)である。
地価の高騰ぶりは他の追随を許さず、公示地価ベースで10年の1万5675円/平方メートル(倶知安町)が、23年には5.93倍の9万3000円/平方メートル(同)に上昇している。
ここでは外資の国土買収という一見不穏な言葉からは程遠いイメージが醸し出されている。それは、豪州系白人がスイスのような白銀のスキーリゾートをつくり上げていく国際都市、というものだ。
ただ、そんなイメージをもって現地に飛んだなら、ここ数年の変化には驚くだろう。
「一言でいうなら、このところのバブルはシンガポール経由の中国マネーです」
地元の重鎮は、私の取材にこうきっぱりと言い切った。
倶知安・ニセコの異常な地価高騰には、資産隠しのためのマネーロンダリング、匿名投資が多数かかわっていると見られる。21年中ごろ、サンシティ・グループが倶知安町の20ヘクタールを買収した時には緊張が走った。同グループトップのアルビン・チャウ(周焯華)は、当時すでに豪米ではカジノがらみのマネーロンダリングなどで入国禁止だった。
「いよいよニセコにも本格的な中国マネーの参入か、裏カジノができるのでは……」
土地売買規制も投資規制もないに等しい
そう身構える地元民もいたが、その後、アルビン・チャウはマカオで逮捕され、日本でもIR事業をめぐる収賄容疑で国会議員が逮捕され、北海道内のカジノ構想は下火になった。
しかし中国大陸からすると、北海道は何かと仕掛けるに好都合なのだろう。欧州よりはるかに近いし、土地売買規制も投資規制もないに等しい。積極的な投資活動は、新幹線開通の30年までは沸騰したまま続くだろう。
私が懸念するのは止まらない巨大なリゾート開発と増大する水需要をどうコントロールしていくかという点だ。大型上下水道などを準備するコストを誰が負担していくのか。景観保持も含めたこれらの問題では、町民と海外オーナーとの意見の相違も出てくるだろう。
先進的な宿泊税(町税)を19年から徴収するようになった倶知安町では、これまでならシャンシャンだった観光協会の理事や会長も選挙になった。今後、税収が増えるにつれ、その分配をめぐる調整は難しくなっていくだろう。
税を支払う側の国際派(外資及び外国人)の発言力が大きくなるにつれ、公共組織のトップの人選も変わってくるはずで、近い将来、海外の者が観光協会会長になるなど、ガバナンスの一端を担うようになる日が来る、と私は推測する。
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