「うちは全て借地ですから」
上海電力に視察を許され、私、大竹憂子議員、3人の案内者載せたワンボックスカーは西郷村の赤茶けた開発現場をいくつも廻まわった。
最後の現場で車から降り、調整池の予定地をしばし眺めながら、私は聞いてみた。
「このあたりの土地はいつ頃、買収されたのですか?」
上海電力日本の東京本社幹部は即答した。
「うちは全て借地ですから」
「……」
一瞬、絶句してしまったが、事業用地はすべて借地であって買収地はないという。つまり上海電力は日本の土地を買収していないというわけだ。
後日、調べてみると、確かに当該地の登記簿に上海電力日本株式会社という名称は登場しない。登記簿上の所有者は都内台東区に所在する西郷ソーラ発電株式会社で、資本金300万円、役員一人(日本人)である。土地所有権は2014年3月24日に取得していた。
これだと、その土地は「外資や外資系法人によって国土が買収された」という事例にはあてはまらない。それゆえ、農水省林野庁が公表している資料「外国資本による森林取得に関する調査」に西郷村の買収事例は一切登場しない。
経産省資源エネルギー庁の公表資料「再生可能エネルギー事業計画認定(旧設備認定)情報」も同様だ。上海電力や上海電力日本の名前は全く出てこない。発電事業者として公表されているのは、資本金1万円の株式会社P社と、資本金100万円のN合同会社の2社だけだ。
そう、先に紹介したガイド役の男性が兼務しているという会社だ。このちっぽけな2社が当地に地上権を設定し、620ヘクタールという巨大メガソーラーの事業者となり、国による高額な電力買上げを受けている。
大半がこのスキームを採用している
しかし現地では、誰もが「ここのソーラーをやっているのは上海電力だ」といい、現にこうやって現地案内をしてくれるのも、上海電力日本幹部と、上海電力日本、株式会社P社、N合同会社の3社を兼務する社員らである。
どういうことかというと、株式会社P社とN合同会社は上海電力(中国)の孫会社に相当する。大事なところは、この孫会社の2社がいずれも上海電力や上海電力日本とは別法人であるということだ。
法人登記によると、株式会社P社の代表取締役は「上海電力日本の代表者、施伯紅」であり、N合同会社の代表社員は「法人としての上海電力日本株式会社」である。2社とも法人の所在地は、上海電力日本の本社住所(東京都千代田区)と全く同じになっている。
これを知って私は「ははーん」と思った。なぜなら、外資による国土買収の現場においては、こういった企業構造は特異なことではないからだ。
実はメガソーラーはじめ、各種再エネ事業で規模が大きい事業者の場合、国内企業も外資企業も、大半がこのスキームを採用している。会社形式は合同会社のものが大半だ。
なぜこうした構造にするのか。知り合いの弁護士に聞いてみた。