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自己矛盾に陥っている経産省の半導体政策

経産省は、今のままでは日本半導体産業のシェアが2‌0‌3‌0年に0%になってしまうという危機感を持った。そこで、シェアの低下を止め、上昇に転じさせるための政策を立案した。 

その目玉が、半導体工場の新増設に補助金を投入する改正法だった。この改正法は、2‌0‌2‌1年12月20日、参議院本会議で与党などの賛成多数で可決し、成立した。その改正法により、補助金は国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に設置する基金から複数年にまたがって拠出する。その基金は、2‌0‌2‌1年度補正予算でまず6‌1‌7‌0億円を計上した。 

シェア貢献ほぼなし、経産省が国民の税金を無駄遣い…おめでたい日本人が大歓喜する半導体メーカーTSMC熊本工場の不都合すぎる真実_1
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この改正法による補助金として、TSMC熊本工場に4‌7‌6‌0億円、マイクロン広島工場に4‌6‌5億円、キオクシア四日市工場&北上工場に9‌2‌9億円が支出されることになった。 

ところが、補助金を投入しても、TSMC熊本工場の月産5.5万枚の20~30%しか日本のシェアには貢献できない。また、マイクロン広島工場の貢献度は0%であり、さらにキオクシア四日市工場&北上工場では、その50%しか日本のシェアの増大に貢献しない。 

したがって、経産省が立案した政策に従って、日本政府が補助金をTSMC熊本工場、マイクロン広島工場、キオクシア四日市工場&北上工場に投入しても、日本半導体全体でのシェアの向上は、数%あるかないかだろう。 

筆者は2‌0‌2‌1年6月1日の衆議院の意見陳述で、日本半導体産業が凋落したのは「診断が間違っていたため、その処方箋も奏功しなかった」と論じた。今回の経産省ならびに日本政府の診断と処方箋も、間違っていると言わざるを得ない。6‌1‌7‌0億円の補助金を投入したところで、日本半導体産業の大幅なシェアの向上は、ほとんど期待できないからだ。 

さらにまずい事態が起きつつある。TSMC熊本工場が2‌0‌2‌4年から生産を開始するはずの28‌nmのロジック半導体の不足が解消されてしまったのである。