高円寺からやってきた、ごく自然に本来の循環を体現しているお店

さらにもっともっともっと暑い日。

東京より友人来る。夜はコース料理の予定だったので、ランチは軽めにヴィーガンカレーにしようと、材木座の「香菜軒 寓」。2016年に高円寺から移転してきた。知り合いの編集者に「僕が大好きだったカレー屋さんが鎌倉に越しちゃったんですよ。ぜひ、行ってみてください。きっと気に入ると思うので」と教えてもらい、その名を知った。

場所は材木座の住宅街。手作りっぽい看板を入ると、簡素な小屋が三つ。一番の奥のキッチンがある小屋以外エアコンはない。私たちは真ん中の小屋に通される。扇風機のみ。おしゃれなインテリアなんかとは無縁。海のそばというより山奥が似合いそうな雰囲気で、「ポツンと一軒家」の世界。

海のそばというより山奥が似合いそうな雰囲気
海のそばというより山奥が似合いそうな雰囲気

メニューに魚や海老のカレーはあるが、肉、卵、乳製品、添加物、化学調味料、白砂糖は不使用。野菜は藤沢の柿右衛門農園のもの。柿右衛門農園では化学肥料や農薬は一切使用していない。店の一角では柿右衛門農園の野菜を無人販売している。「野菜カレー」「豆カレー」「カツオのスモークとキャベツのカレー」「天然エビのカレー」。「野菜」と「天然エビ」を選び、野菜の定食のセットで注文する。

ビーツのポタージュ、野菜の春巻き、漬物など盛りだくさんの野菜料理を食べ、ぷうっと膨らんだインドの揚げパン・プーリーを食べ、玄米とカレーも完食して、お腹がいっぱいになったはずだけれど、膨満感は皆無。普段、いかに余計なものを食べているのか思い知らされる。生き物としての正しさを少しだけでも取り戻せたのかしらん(何しろ単純なもので)。

ぷうっと膨らんだインドの揚げパン・プーリーと
ぷうっと膨らんだインドの揚げパン・プーリーと
酷暑の夏。甘糟りり子が生き残るために始めた“スパイス”活動、鎌倉にてカレー三昧の日々_6

ファッションとしての、あるいはアピールとしての SDGSではなく、ごく自然に本来の循環を体現しているお店。汗だくになって店を出る頃、私のような消費型バブル人間は申し訳ない気持ちにもなった。

流行の店ではなく、アットホームな食堂、そこがいい

まだまださらに暑いある日。
夕方、買い出しのついでに御成通りから少し外れた場所にあるその名の「スパイスハウス ぺぺ」に行く。ここはジャンルを超えてスパイスを使った料理を提供している。メニューには、カレーはもちろん、激辛坦々麺やメキシカンライス、麻婆豆腐もある。

看板メニュー「マサラライス」
看板メニュー「マサラライス」

看板メニュー「マサラライス」を注文。鶏のモモ、ムネ、ハツ、レバー、砂肝を16種類のスパイスで煮込んだもの。ここはとにかく一皿の量が多いので、食べ切れず。スパイスケーキには辿り着けなかった。隣のテーブルには子供二人の家族連れ。流行のスパイス料理の店ではなく、アットホームな食堂で、そこがいい。