築百年の数寄屋造りの日本家屋から見える「月と松」

ここ数年、鎌倉の景色が変わりつつある。瀟洒なお屋敷が放置されているなあと思っていると、取り壊されて更地になり、コインパーキングや事務的な集合住宅になってしまうことが多くなった。

材木座の『月と松』はおおよそ築百年という数寄屋造りの日本家屋。瓦屋根のついた大きな門、茶室、石塔のある広い庭、この空間には日本の文化が詰まっている。

数寄屋造りの「数寄屋」とは茶室のことで、数寄屋造りとは茶室もしくは茶湯を行う部屋の様式を取り入れた建築様式。オーナーが初めて訪れた際、門の脇の立派な松を見上げたら満月が見え、その景色をそのまま店名にしたそう。きっとここはかつて海岸で、松は当初からあったものではないかと思ったという。俳句のようなネーミングである。

築百年の数寄屋造りでからすみ蕎麦。「ありそうでない」がぎっしり詰まった鎌倉・材木座の「月と松」_1
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材木座海岸から徒歩2分の場所に位置する「月と松」は今年の9月に開業したばかりの、からすみ蕎麦の店。蕎麦屋ではない、からすみ蕎麦の店だ。

小鉢→逸品(揚げ物)→からすみ蕎麦というコースの他、単品メニューはいろいろと用意されている。しつこいけれど、蕎麦はからすみ蕎麦だけ。打ちたての蕎麦には出汁が絡めてあって、ふんだんに削られたからすみとスライスしたからすみが載せられている。蕎麦と出汁とからすみのセッションを体験するといったらいいだろうか。いや、出汁とからすみと蕎麦だけでなく、古い日本家屋が醸し出す遠い過去からの時間もそこに加わって、独特の風味を醸し出している。

築百年の数寄屋造りでからすみ蕎麦。「ありそうでない」がぎっしり詰まった鎌倉・材木座の「月と松」_2
小鉢、逸品(揚げ物)、からすみ蕎麦のショートコースで3500円
築百年の数寄屋造りでからすみ蕎麦。「ありそうでない」がぎっしり詰まった鎌倉・材木座の「月と松」_3
打ちたての蕎麦には出汁が絡めてあり、削られたからすみとスライスしたからすみがたっぷりと