元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第3部】反政府活動で混乱する台湾、中国が夜中に重要施設を攻撃
元陸上自衛隊最高幹部が、中国の台湾侵攻を完全にシミュレーションした『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』より、Xデー(上陸日)がくる10日から前日までのシミレーションを一部抜粋・再構成してお届けする。
『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』#3
【Xデーマイナス2日~1日②】
( 台湾 )
台湾政府は、中国が武力侵攻を開始したとして国際社会に支援を要請する悲鳴にも似た声明を発表し、米軍の直接介入を強く求めた。頼総統は全市民に「中国の侵略に対して、軍は最後まで戦う。市民はパニックにならずに防空壕などに退避してもらいたい」と呼びかけた。
( アメリカ )
台湾の呼びかけを受け、アメリカが動いた。
アメリカ政府は「台湾への武力侵攻は国際社会の平和と安定を脅かすもので、断じて許されない」と声明を発表した。日本政府に対し、東シナ海で活動する米海軍艦船への給油などの後方支援を要請した。
インド太平洋軍司令部は、隷下の4軍に対し、「中国軍の攻撃を受けた場合には、ただちに反撃せよ」と命令した。
( 東京 )
日本政府は安全保障会議を開催し、情勢分析及び事態対処の方向性を審議した。この結果、米軍の後方支援に関して重要影響事態の認定を行い、自衛隊にその任務にあたらせることにした。
防衛省では緊急の防衛会議が開催され、防衛政策局長による事態認定の説明が行われた。
「重要影響事態に認定したが、すぐに存立危機事態、武力攻撃事態になるとの予想だな」と和田防衛大臣が確認した。
「そうです。中国側から見れば、米艦のそばにいる海自艦は共同で作戦行動を行っている敵艦です。万が一、米軍が攻撃されれば存立危機事態へ、同時に海自が攻撃されると武力攻撃事態です」
「中国側には、我が国の法体系は理解できないよ」と防衛副大臣が言った。
「日米の作戦調整は大丈夫か」
統合幕僚長が補足した。
「中央指揮所内に、統合副司令官とインド太平洋軍副司令官を長にした日米共同運用調整所を設置し、すでに作戦調整を開始しています」
#1『元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第1部】中国経済の崩壊、台湾は国連総会に参加申請…』はこちら
#2『元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第2部】台湾、過激派反政府デモで大混乱』はこちら
#4『元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第4部】石垣島への攻撃開始…空港、発電者がダウン』はこちら
『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』 (講談社+α新書)
山下裕貴
2023年4月19日
990円
216ページ
ISBN:978-4065319598
「問題は、侵攻のあるなしではない。それがいつになるかだ」
中国の台湾侵攻について、各国の軍事・外交専門家はそう話す。
中国の指導者・習近平はなにをきっかけに侵攻を決断するのか。
その際、まず、どのような準備に着手するのか。
アメリカ・台湾はその徴候を察知できるのか――。
元陸上自衛隊最高幹部が、台湾侵攻を完全にシミュレーションした!
陸上自衛隊の第三師団長、陸上幕僚副長、方面総監を務めた元陸将・山下裕貴氏は、沖縄勤務時代には与那国島への部隊配置も担当した。中国人民解放軍、米インド太平洋軍、そしてもちろん自衛隊の戦力を知り尽くす。戦地となる台湾周辺の地形も分析し、政府首脳も参加する机上演習(ウォーゲーム)のコーディネーターも務める、日本最高の専門家で、本書はいわば、「紙上ウォーゲーム」である。
中国と台湾を隔てる台湾海峡は、もっとも短いところで140キロもある。潮の流れが速く、冬場には強風が吹き、濃い霧が発生して、夏場には多くの台風が通過する、自然の要害である。
ロシアによるウクライナ侵略では、地続きの隣国にもかかわらず、弾薬や食料などの輸送(兵站)でロシア軍は非常な困難に直面し、苦戦のもっとも大きな原因となった。
中国は台湾に向け、数十万の大軍を波高い海峡を越えて送り込むことになる。上陸に成功しても、その後の武器・弾薬・燃料・食料・医薬品の輸送は困難をきわめる。
「台湾関係法」に基づき、「有事の場合は介入する」と明言しているアメリカも、中国の障害となる。アメリカ軍が動けば、集団的自衛権が発動され、同盟国の日本・自衛隊も支援に回る。
つまり、自衛隊ははじめて本格的な戦闘を経験することになる。
日米が参戦すれば、中国は台湾、アメリカ、日本の3ヵ国を敵に回し、交戦することを強いられる。
それでも、習近平総書記率いる中国は、「必勝」の戦略を練り上げ、侵攻に踏み切るだろう。
そうなったとき台湾はどこまで抵抗できるのか。
アメリカの来援は間に合うのか。
台湾からわずか110キロの位置にある与那国島は、台湾有事になれば必ず巻き込まれる。与那国島が、戦場になる可能性は高い――。
手に汗握る攻防、迫真の台湾上陸戦分析!