タフガイといえばカート・ラッセルだぜ!

それに加えて監督のジョン・カーペンターが描く孤高のヒロイズム。

のちに『エイリアン』(1979)や『ブルーサンダー』(1983)『スペースバンパイア』(1985)『トータル・リコール』(1990)の脚本を手がけるダン・オバノンと組んだSF映画『ダーク・スター』(1974)で突如として頭角をあらわし、『ハロウィン』(1978)で初のホラーキャラクター“ブギーマン”を登場させ、ヒッチコックスタイルのサスペンスを大きくアップデートさせた『ザ・フォッグ』(1980)といった恐怖映画の新たな騎手として注目を集める一方で、『要塞警察』(1976)や『ニューヨーク1997』(1981)で男臭い硬派なアクションも手がけ、ほぼ同世代、同出身地のジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグの明快なスタイルとは一味違う作風や孤高のスタンスが、己の複雑さをアピールしたい年頃の高校生のルサンチマンを直撃。

特に『ニューヨーク1997』以降のカーペンター映画の顔になるカート・ラッセル演じる、タフで寡黙な元軍人の犯罪者プリスキンは、黒いアイパッチ、素肌に革ジャンというスタイルで、口癖は「スネークと呼べェ…(Call me Snake)」。かっこよすぎてみんなマネするんだけど誰もそのかっこよさには到達できない。唯一成功したのは、四半世紀後にリリースされたゲーム『メタルギアソリッド』シリーズの主人公、ソリッド・スネークだけだろう。

1982年、本作によって頂点を極めたホラー映画の残酷描写。隆盛一途かと思いきや、この流れは途絶えて樋口真嗣を落胆させる。その理由とは!? 【『遊星からの物体X』その2】_2
『ニューヨーク1997』のカート・ラッセル。その後もタフガイの象徴であり、72歳の現在もマーベル作品などでアクションを見せている
©Mary Evans/amanaimages

さらにカーペンターの孤高っぷりで忘れてはならないのは音楽だ。