可愛らしい声で重宝されるも「このままではすぐ“詰む”」


「新人時代は甘ったるく可愛らしい声で重宝されたかもしれませんが、このままではすぐ“詰む”な、ということは自分でもわかっていました。この声で10年、20年とやっていくのは難しいと。声自体を意識的に変える、喋り方を変えることはスキルの一つとして必要だなと思いました。

バラエティはもちろん楽しかったし、やりがいもありましたが、紀行物やニュースをやるには、やっぱりこの声では違和感があるんです。実際に声を当ててみても重みが足りない自覚はあったので、声自体を変えなければいけないと思いました」

入社してすぐに人気アナとなった堀井さんだが、「このままではすぐ“詰む”」と独自にトレーニングを開始したという
入社してすぐに人気アナとなった堀井さんだが、「このままではすぐ“詰む”」と独自にトレーニングを開始したという


低い声を出すように意識を切り替え、ボイストレーニングを始めた堀井さん。くわえて、“聴くポジション”に徹することで、いつしかゲストから「話しやすかった」「堀井さんが聴き手なら安心だね」と言われることが増えたという。

「もともとアナウンサーには本質を聞き出すとか、真相を聞くとか、そういう役割はなくて、万人が楽しめるキャッチーな言葉を引き出すのが役割だと思うんです。だから話すことに意識を向けるよりも聴くことに意識を向けてきました。大事なのは話を引っ張り出そうとすることではなく、あなたのことをもっと知りたい、教えてほしい、という意識なんだと思います」

また堀井さんが“聴く力”を身につけたのは、アナウンサーだけでなく管理職も経験したことも大きかったという。

「管理職になってからは、コーチングの研修も受けました。そこではひたすら黙って聴くこと、答えは提示しない傾聴を学びました。やり方を示さずに傾聴に徹するのは、とても難しかったです。人は会話をしながら『自分の意見を求められたらどう返そう』などと考えてしまうものですが、自分ではなく、相手だけに集中するというのも、そのときに身についたのだと思います」

会話の中で沈黙があるとどうしても焦ってしまったり、何か喋らなくては、という気持ちになってしまいがちだが、そうした焦りも必要ないという。

「アナウンサーはインタビューの際、相手の言葉を待ちなさいと教えられるんです。それが鉄則。たとえ沈黙があったとしても、その後に本音や思いもよらない言葉が出ることがあるからです。これは一般的な会話にも活かせると思います。思ったことをすぐに口にするのではなく、相手はどう受けとめるだろう、と頭の中でいったん反芻してから言葉にすると、より伝わるものです」