杓子定規なオペレーションに批判も
思い返せば、15年ほど前、コンビニで商品をスキャンした際に「年齢確認が必要な商品です」と自動音声が流れるだけの時期があった。当時、三十路を超えた女友達が「コンビニで20歳未満か聞かれちゃった」と嬉々としていた。
自動販売機購入の成人識別ICカード「タスポ」が導入されたのもこの頃で、年齢確認が厳しくなった。その後、ほどなくして喫茶店、居酒屋などではこっそりタスポを貸してくれるところも出てきた。
2026年3月末でタスポは終了となる。公式サイトによれば、その理由が「成人識別の厳格性の担保を前提とした現行システムの継続が困難」とのことだ。
これに代わって、運転免許証やマイナンバーを利用した新たな読み取り装置が導入される見込みだ。対面も自販機も、年齢確認はこれからより厳格にシステマティックになっていくのだろうか。
「仮にA社がタッチパネルでの年齢確認をやめようとしても『B社、C社はきちんと確認しているのにA社はやっていない』といった批判を受けかねない。
口頭確認に切り替えたら切り替えたで客とトラブルが生じるリスクなども考えられる。そうした状況を鑑みると、現状を変えるのはなかなか難しいのではないでしょうか」
しかし、コンプライアンスと並んで、世の中の声も店舗や企業のあり方に対し大いに影響を与え得ると、阿部氏は続ける。
「年齢確認に限らず、あまりに杓子定規なオペレーションというのは批判を受けることも。中高年にまで毎回年齢確認を求めるのは、常識的に考えてやりすぎではないかという人が多ければ、消費者にとってよりストレスの少ない方法が生まれるかもしれません」
いったい誰のため、何のための年齢確認なのか。根本的な意義を考えた運用が求められるだろう。
取材・文/小林 悟
企画・編集/一ノ瀬 伸