開幕直後は好スタートを切るが中盤から失速するパターン

2022年シーズンはエンゼルスのもろさが際立ったシーズンでした。5月15日のアスレチックス戦を終えた時点で24勝13敗。貯金11でエンゼルスはア・リーグ西地区の首位を快走していました。

もしかしたら今年はやってくれるかも! と期待に胸を膨らませた矢先のことです。5月下旬から6月上旬にかけて球団史に残るワースト記録の14連敗。マドン前監督も解任され、結局、例年と変わらない、「なおエ」なシーズンとなってしまいました。

大谷さんがエンゼルスに移籍した2018年以降、開幕直後は好スタートを切りますが、シーズン中盤から終盤にかけて失速する、この繰り返しでした。ベストメンバーなら強い打線とされていますが、故障者が出ては、代わりに台頭する選手が少ない。簡単に言えば、結果的に選手層が薄いメンバーだったと言わざるを得ません。

「実は最悪だったマイナー環境」投打で活躍する大谷翔平がいてもエンゼルスの勝率が5割越さない理由_2

MLB球団で最下位! エンゼルスのマイナー環境

1つの要因として、マイナー組織から選手が育ちにくいことがあります。2022年の時点で、MLB公式サイトが発表したファームシステム(マイナー組織の育成環境など)のランキングによると、エンゼルスはなんと、MLB30球団で最下位の30位となっています。

理由は、過去にドラフト上位で指名した選手が、期待通りに活躍していないことにあります。

近年で言えば、テイラー・ウォードが2015年のドラフト1巡目(全体26位)で指名され、2022年シーズン、強打を生かしてレギュラーに定着しました。一方、2017年のドラフト1巡目(全体10位)に指名されたジョー・アデルは、期待が大きかったものの守備面に不安を残し、MLBのトップレベルの舞台ではいまいち活躍できていません。主力がケガで離脱した時に、若手がカバーし、主力選手を脅かすくらいの活躍をする。バランスのいい新陳代謝が強いチームには欠かせないのですが、その新陳代謝が少ないのです。

ただ、ポジティブな傾向もあります。2020年のドラフト1巡目(全体10位)で指名された期待の左腕リード・デトマーズが、2022年5月に球団史上最年少22歳でノーヒットノーランを達成。シーズンを通じて好不調の波はありましたが、25試合の先発登板で7勝6敗と踏ん張りました。また、最速105.5マイル(約169.8キロ)の剛腕ベン・ジョイスら有望な若手投手もまだいます。

とはいえ、他チームを見渡してみると、同じア・リーグ西地区のマリナーズでは、2018年のドラフト1巡目(全体14位)の右腕ローガン・ギルバートが2022年シーズンで13勝6敗、防御率3.20の好成績を残し、2019年のドラフト1巡目(全体20位)の右腕ジョージ・カービーは8勝5敗、防御率3.39と、若い2人がチームの投手陣を支えました。

レイズでは2018年のドラフト1巡目(全体31位)の左腕シェーン・マクラナハンが、2022年のオールスター戦の先発に選ばれるなど才能を開花させ、12勝8敗、防御率2.54と大活躍。若い投手が順調に成長している他球団を見れば、エンゼルスには物足りなさが残ります。