政権中枢に経済通がいない
それでも中国のあまたある銀行の闇を解決出来る見通しはない。
5大銀行は中国工商、中国建設、中国農業各銀行に中国銀行、そして交通銀行である。ついで有力なのが浦東発展銀行、上海銀行など。これらは国有もしくは公有であって倒産の心配はないが、地方銀行、郵貯のたぐいから農村などの信用組合などは、「信用」の看板があっても信用できないのだ。
第一に中国の人口動態の激変である。農村から都市への移住が激しく、地方銀行の疲弊がある。第二に地方政府の債務の「融資平台」で債権デフォルトの爆発がみられる。
これを「隠し債務」というが、公式に900兆円(45兆元)。このため政府は地方債起債の再開を黙認し、ハイテク都市建設債とかグリーン債とか、じつに適当な、しかも薔薇色の投資だと銘打って金利8%以上のおまけ付きで売り出した。運転資金であって新規投資のためでないことが明らかだから一般民衆はそっぽ、国有企業や保険会社が買わされている。悪循環である。
共産党の直接管理としたため見通しはますます暗い
第三はネット銀行が興隆し、若者ならびに都市生活者がネット上に口座を開設、既存の銀行から預金を取り崩した。
第四はもっと本質的な中国の汚職文化である。銀行トップが融資先から賄賂をとって、不正融資と知りながら裁決するのだ。これらは不動産開発などに振り向けられた。
第五に不正融資先の多くがマフィアなど犯罪集団で、地元の共産党幹部とグルになっているため将来の焦げ付きがわかっていても断れないという地方の暗黒面が反映している。
中国政府は「救済合併」という手段で倒産銀行をほかの地方銀行に押しつけ、事態の沈静化を計った。しかしマグマはくすぶり続けている。その一方で、倒産した不動産デベロッパーに巨費を注ぎ込んで、救済を図るとはナニゴトカと、預金者の不満が爆発寸前である。
習近平は独裁皇帝、なにごとも自らが決済する。それゆえ直面する金融危機にあたって、強権的立場をさらに強化した。経済政策は国務院の専管だった。これを取り上げ共産党の直接管理としたため見通しはますます暗い。