実務を前面に出した大学なのに、論文数で評価?

仲間内で固まる教育界は新参者にとって壁が高い。私立学校を全く新しくつくるには高校以下は都道府県、大学や短大は文科省の審議会による学校法人の設置認可が必要だ。審議会の委員の多くは既存の学校関係者で、事実上、既存勢力が新規参入を認めるか否かの決定権を持っている。

例えば四年制大学は少子化が進む中でも増え続け、21年度は803校と01年度より134校も増えたが、大半は短大など既存校からの転換で新規参入はまれだ。

大学を運営する学校法人の経営権を譲り受け、新たな学部をつくる場合でも審議会の認可が必要だが、異分野から全く新しい発想を持った経営者が参人しようとすると審議会の理解を得るのに苦労するケースもある。

こうした"参入障壁"を打破するため小泉純一郎内閣時代に導入されたのが、構造改革特区による株式会社立学校制度だ。

「変革」を拒み続ける日本の教育機関…前例踏襲、参入者への妨害を続ける教育ムラのルール_3

前例踏襲の思想は教育行政に徹底

東京都心部のJR御茶ノ水駅前のビジネスビルにキャンパスを構えるデジタルハリウッド大(杉山知之学長、東京・千代田)は04年、デジタルハリウッド大学院大学として開校、05年に学部を併設して今の校名に改称した。

構造改革特区の株式会社立大学で、映像やコンピューターグラフィッ(CG)、ウェブ、アニメ、グラフィックデザイン、IT (情報技術)プログラミングなどのデジタルコンテンツの制作技術を学ぶユニークさが特徴だ。

「(自前で用地や校舎を用意するなど規制が厳しい)学校法人は数十億円もの設立資金が必要で、ベンチャー企業が進出するのは無理。(規制がゆるい)構造改革特区の株式会社立だから大学をつくることができた」と杉山学長は振り返る。

それでもいざ、国に設置認可を申請すると、有名大学の教授が名を連ねる審議会では「すぐに役立つ人材を育てるというが、大学とはそういうものではない。浅薄だ」と酷評された。委員の理解を得ようと担当官僚が「海外にモデルとなる大学はありますか」と聞いてきたので、「モデルはない」と告げると「そうですか。前例がないのですか……」と困惑された。

前例踏襲の思想は教育行政に徹底していた。実務を前面に出す大学として開校から20年近くたった今でも、開校後の外部評価では論文数が重視され、全国でも10位前後を維持する大学発ベンチャーの設立数はあまり評価されない。文化の違いは深刻だ。