「国語力」の低下が引き起こす問題

全国の約120人の現役の教員に話を聞いたところ、8割が子供たちの「国語力」の弱さを感じていると回答していました。

ずいぶん前から、中高年世代によって「最近、言葉の通じない若者が増えた」という話は語られてきました。これは、言葉や常識がアップデート(更新)されることで、世代間でズレが生じ、中高年世代が若者世代とうまく意思疎通ができなくなることが原因でした。

教員の8割が感じている「子供の国語力低下」が引き起こす深刻な問題_1
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私が『ルポ 誰が国語力を殺すのか』で描いたのは、それとは違う意味合いです。

現在の教育現場で深刻化しているのは、子供たちが言葉によって自分の感情に向き合い、想像し、表現し、物事を打開してく力が、複雑化した社会と照らし合わせて不足しているということです。何事も「エグイ」「ヤバイ」「キモイ」で表現する子供がいますね。これらの言葉では自分の感情とも、他者の気持ちとも向き合えませんし、建設的なコミュニケーションも不可能です。

文科省は、「国語力」について語彙をベースにした感じる力、想像する力、考える力、表す力の統合体だとしています。人はその力を駆使することによって、コンピューターとも、他の生き物とも違う、人間らしい営みをします。すなわち、言葉で多くのことを感じ、考え、人とかかわり、道を切り開いていくのが人間なのです。

先の教員たちが口をそろえるのは、その力の弱い子供が目立つ、あるいは力のある子とない子の差が大きいということなのです。