あまりにも高い教育界への“参入障壁”

JR軽井沢駅から車で20分。長野県軽井沢町に4万9500平方メートルの広大なキャンパスを構える「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAK ジャパン」(小林りん代表理事)は14年に開校した日本初の全寮制国際高校だ。

浅間山にほど近いキャンパスには、校舎棟や生徒・教職員棟、体育館、ゲストハウス、集会所、ウェルネスセンターなどが立ち並び、八十数力国から集まった約200人の高校生が学ぶ。①生徒と教員は世界中から応募し、授業は原則英語②生徒全員が寮生活③生徒の多くに奨学金を給付し、真のダイバーシティーを追求――を特色とする国際性豊かな高校だ。

私立のインターナショナルスクールで、世界中の大学に進学できる国際バカロレア認定校だが、日本の学校教育法が定める正規の高校(一条校)でもあるというのが強みだ。

小林代表理事は高校時代に日本の教育に疑問を抱いて海外に留学、その後、東京大と米スタンフォード大大学院で学んだ。外資系金融機関や国際協力銀行、国連児童基金(ユニセフ)などでキャリアを重ねた。09年、「国境や分野を問わず社会に変革を起こすゲームチェンジャーを育てる」学校を創るためにISAK ジャパンの設立準備財団の代表理事に就任、開校に向けて邁進したが、その道のりは苦労の連続だった。

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「外資系企業の出身者が経営する学校で本当に十分な教育をできるのか」

例えば教員の資格問題。教員も生徒も国内外から集めるというのが基本的なコンセプトだが、外国籍の教員は当然のことながら日本の教員免許は持たない。そうした制度的な問題を一つ一つクリアする作業が続いた。中でも想定外かつ最大の関門は学校法人の新設認可に不可欠な県の審議会の承認だった。

「外資系企業の出身者が経営する学校で本当に十分な教育をできるのか、実は利益目的ではないのか」「他校から生徒を奪うのではないか」。審議会では畑違いの「新規参入」に私学関係者らの懸念が噴出した。認可は見送りになり、校舎の建設は中断を余儀なくされた。

関係者に学校の理念を説明して回るなど広報活動を強化して巻き返しを図った結果、ようやく半年後に認可を得たが、開校できたのは当初計画の1年後だった。当時を振り返って小林代表は「学校は公的なサービスだ。新規参入者が同業者に迷惑をかけないためにも、評判を得るための努力が必要になる」と語る。