縄文人がお金で物事を扱っていなかったように
感覚としては物々交換に近い

出版業界全体が非常に厳しいのと同じように、全国各地で発行されていた、また個人で制作されていたフリーペーパーもネットに取って代わられ、いっときに比べるその数を減らし、難しい状況に置かれている。それは好調な「縄文ZINE」も例外ではない。

「いまは通常3万部ぐらいに抑えて発行しています。個人で発行しているフリーペーパーとしてはそれが限界だと思うし、フリーペーパーというジャンル自体が、現在では難しいとは思うんですね。実際、「縄文ZINE」も部数を絞った分、PDFでも読めるようにしています(http://jomonzine.com/pg212.html)」

地域の会社がスポンサードする地域情報誌や、アルバイトや住宅、チケットなどの情報が掲載される企業系のフリーペーパーと違い、趣味や文化をテーマにした個人制作のフリーペーパーはさらに商売になりにくい。

「印刷代はもちろん、送料が上がっているのが痛いですね。そういった物理的に必要な経費は初期に比べて倍ぐらいになってると思います。いまは色んな博物館や史学系のプロジェクト、この冊子への賛同企業やイベントが広告を出してくれているので、赤字ではないんですが、厳しいことは変わりません。『フリーペーパーはお金じゃない』けど、『お金がないと作れない』のも真理なんですよね」

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しかし、そんな状況においても、今後もフリーペーパーとして刊行を続けたいと話す。

「作っている側としても、フリーペーパーというカルチャーが、これ以上伸びることは難しいとは感じています。でも、『縄文ZINE』に関しては、縄文人がお金で物事を扱っていなかったように、感覚としては物々交換に近いというか、無料のフリーペーパーであることは続けていきたいですね。だからこそデータではなく、所有できること、手に取れること、モノとして価値をクリエイトしたいんですよね」

そしてそう望月氏を奮い立たせるのも、また「縄文」だと言う。

「縄文人だって、温暖化や寒冷化といった地球規模の環境変化や、地球の地形の変化という、とんでもないことを乗り越えて1万年以上続いたわけで。その中で新しい文化を起こしたり、環境に適応して生きてきた縄文人の強さを見習って、そして現代の自分たちにとってよりフィットする形で、このフリーペーパーも発行を続けたいですね」

取材・文/高木“JET”晋一郎 撮影/下城英悟