縄文時代は1万年以上ある。
ネタ切れの要素が見当たらない
縄文をはじめとする史学のフリーペーパーというと、専門的な内容であったり、やや取っつきにくい部分を感じるかもしれない。しかし「都会の縄文人のためのマガジン」という「縄文ZINE」のテーマからもわかる通り、「縄文×タトゥー」や「恋する縄文」といった、現代を生きる我々と、縄文の人々を繋げるような内容が興味をひく。
「当然ですが読者は現代人ですし、普通の人が読んで面白いものにしたいので、現代人が興味を持ってくれるような企画をいつも考えています。創刊当初は縄文だけで企画がずっと続くわけがない、すぐネタ切れするとも言われましが、縄文は1万年以上続いたんですから、それを考えたら10年ちょっとでネタ切れなんて言えないですよ(笑)」
その意味でも第13号で特集された「不器用な縄文人」で紹介された歪な土偶や土器のように、亀ヶ岡遺跡出土のものが有名な「遮光器土偶」など、文化財に指定されている美的センスにあふれる土偶ではなく、おそらく手先が不器用な縄文人が作った「不細工な」土偶に覚える人間味からは、「ヒトの変わらなさ」を感じるだろう。
「縄文人と友だちになれるような感覚になってもらえればいいなと思ってますね。気のおけない縄文人の友だちを勝手に想像して、友だち意識が生まれたらいいよね、みたいな。縄文の話をする友達がいなくて作った雑誌なので、そういう仲間ができたらうれしいというのと同時に、縄文の人々とも共通の気持ちや考えを発見できればなと」
スピリチュアルなものを、
現代の視点から過度に縄文に押しつけない
一方で「カワイイ」や「アート」といった、縄文を語る際に使われがちな、キャッチーでわかりやすい、そして現代においてブームの一端を担っているキーワードに対して、慎重に取り扱っているのがこの冊子の特徴だ。同じようにオカルトやスピリチュアルなど、縄文と親和しやすい、しかしある意味では危険なものとも、一線をしっかりとおいている。
「例えば獲物や食べ物が少なければ森に祈ったり、病気に対して土偶を祈りの道具にしていたかもしれない。そういう社会や個人の問題を祈りで解決するような縄文の心のありかたは、すごく理解できます。でも、そういったスピリチュアルなものを現代の視点から過度に縄文に押しつけたり、現代の自分たちの生活に取り込むのはちょっと自分は違うなと思っています。現代においては、病気は祈るよりも、医者にかかったほうが治りますから(笑)」
しかし書店のスピリチュアル系の本棚には縄文をテーマにしたものや、国家を称揚するために縄文を「利用」する書籍も決して少なくはない。そういったものに対する自らの見解を提示するためにも、「フリーペーパー」という媒体は最適だったと話す。
「『縄文こそ日本の心』『縄文はスピリチュアル』みたいな話を聞くと、正直『ちゃんと研究してないな』『受けがいいから縄文を利用してるだけだろ』と感じるんですよね。縄文時代に今の「国境」を持ち出すのっておかしな話じゃないですか。世界遺産に選ばれたのも『日本の遺跡が世界遺産に選ばれた、だから日本はすごい』というよりは、『人類の叡智』が選ばれたという方が適切だし、それが人類の宝として認められたんだと思います。