#1 2度の鑑別所行き、ギャンブル依存の非行少年がキックボクシング王者になるまで
気がついたら3か月で1000万円もの借金
キックボクシングトーナメントの優勝後も、キックボクサーとして活躍を続け、格闘技業界での知名度が上昇していった。格闘技雑誌に見開きで特集が組まれることもあり、中竹さんに憧れて道場に入門する子供も増えた。
名前が売れていくと、応援してくれる人も増えていく。人脈が広がり、たくさんの人と交流していくうちに、徐々に10年以上も道場の内弟子を続ける自分の生活ぶりが異常だと感じられてきた。当時31歳。仕事をしなければならないという気持ちが芽生えた。そして、長らく内弟子を続けた館長の道場を辞めることとなる。
「道場を出た後は、御世話になっていた格闘技ジムの会長に、その人の知人が経営する会社の配達員の仕事を紹介してもらいました。知り合いの誼みもあって、内弟子の頃とは全く違う待遇で働き出せたんです」(中竹一刀さん、以下同)
月の給料は24万円。住む部屋が与えられ、車も貸してもらえた。まるで別世界だ。仕事を紹介してくれた会長のジムに新しく所属し、仕事をしながら格闘技の練習にも励んだ。
まっとうな生活環境が整い、人生が好転していくように思えたが、ここで再びギャンブルにハマってしまう。
最初の道場にいた頃は、中竹さんを慕ってくれる道場生から借りたお金で、館長の目を盗んでコソコソとスロットを打つことがあった。しかし、新しい生活は仕事と稽古の両立で忙しく、なかなかスロットに出かける時間が取れない。
「息抜きのギャンブルができない生活にイライラが募っていた頃、最初の道場にいた時には持っていなかったスマートフォンで、オンライン競馬ができることを知りました。そこで一気にハマってしまったんです」
長い期間、内弟子として道場に住み込む制限の多い生活を続けてきところ、突然普通の社会人の暮らしに変わった反動も大きかったのだろう。正常な判断ができないほど、ギャンブルへの熱が高まっていった。
気がついたら3か月で1000万円もの借金ができていた。当然、首が回らなくなり、家族を頼ってなんとか肩代わりして貰うこととなる。
この時、借金がとんでもない額に行き着くまでギャンブルにのめり込んでしまったということを、自戒の念を込め、御世話になっているジムの会長に報告した。
会長は「お前は真面目に格闘技に打ち込んで普通にしていればいい奴なんだから、もうギャンブルはやめて家族にも迷惑をかけるな」と本気で中竹さんを思いやり叱ってくれた。
それからは心を入れ替え、真面目に仕事とキックボクシングに打ち込み、ギャンブルをしない生活を送ったという。家族に肩代わりして貰った借金は、1年にわたって毎月十数万円ずつ返していき、100万円以上はなんとか返済している。