「平均年収5万円の村で......」フェイクニュース製造村の実態

では、権力者以外に誰がフェイクニュースをつくるのか。NHKが2018年に取材した「フェイクニュース村」を紹介したい。

この村の名は「ヴェレス」といい、マケドニアという東ヨーロッパのバルカン半島南部にある小さな国に存在する。米ニューヨークから飛行機を乗り継いで、20時間かけて首都スコピエのスコピエ・アレクサンダー大王空港(現・スコピエ空港)に到着。そこから南に50キロほど車で走ったところにある。

人口約4万人のヴェレスは、住民の月収が5万円程度と豊かとは言えない地域だ。取材をしたNHK佐野広記ディレクターによれば、この町では市民がこぞって英文のフェイクニュースを作成し、PVを稼ぐことで収益を得ているのだという。

「馬鹿が俺らの嘘を本気にしている」…フェイクニュース製造村に潜入! 極貧地域、クラスの4割が毎日5本執筆の実態_3

面白くできるポイントだけ書き換える

「耳にピアスして『渋谷で遊んでいます』みたいな感じの大学生が、取材に応じてくれました。『米国人はバカだ』『オレたちはあるわけがない嘘を書いているのに、奴らは本気にして読むんですよ』『すごくたくさん読まれてボロ儲け。けっこう楽なんだ』と軽いノリで小遣い稼ぎをしている。ヴェレスでフェイクニュースをつくっているのは200~300人とのことでした」

マケドニアは英語圏ではない。単語だけを調べて、英語の記事は中学で習ったレベルの文章にするのだという。ゼロから取材して書くのではなく、「CNN」などのニュースサイトからテキストを引っ張ってきて、加工ソフトで面白くできるポイントだけ書き換える。

例えば、トランプ氏が「メキシコとの国境に壁を造る」というニュース記事は、文章の大半はそのまま使いつつ、一部を「ネバダに収容所を造ると言っている」などとセンセーショナルに書き換えてしまう。普通のニュースサイトのような文章に仕立てあげ、作成した記事を自分のウェブサイトに掲載、そこに広告配信サービスを埋め込む。読者が広告を見たり、クリックしたりすれば、広告料が入るという仕組だ。