ターゲットになりやすい「高齢者」と「障がい者」
特殊詐欺の場合、犯罪組織の間ではターゲットとなる高齢者の名簿が売り買いされている。特殊詐欺では、判断能力が弱かったり、認知症があったりする高齢者の方が騙されやすいので、そういう人が数多く載っているリストの方が高額で販売される傾向にある。
同じことは、若者から中年向けの詐欺にも当てはまる。この世代であれば、認知症は少ないので、一番のターゲットとなるのは知的障害や発達障害などの障がいを持った人たちである。健常者より、詐欺に騙されやすいとされ、狙われやすいるのだ。
その犯罪の舞台裏に光を当てたい。
関西に暮らす発達障害の中村正也(31歳、仮名)は、これまでわかっているだけで11件の詐欺被害を受けた。正也は子供の頃に発達障害と診断され、中学までは普通学級に通っていたが、高校は通信制高校へ行き、卒業後は実家の近くにアパートを借り、障がい者雇用に理解のある企業で働いていた。
その間、正也は何度も詐欺の被害に遭った。一番多いのは、勧誘商法だ。若い女性に声をかけられ、何度かお茶をする中でうまく言いくるめられ、高額な商品をローンで買わされるのだ。
こうした詐欺が悪質なのは、加害者が被害者をカモになると判断した場合、その連絡先を仲間内で共有することがある点だ。最初の女性は正也に高額な商品を買わせてトラブルになるとさっさと逃げて、別の仲間に正也の情報を教えた。別の仲間はほとぼりが冷めた頃に正也に近寄ってきて、同じように勧誘によって高額な商品を買わせる。こうしたことを延々とくり返すのである。
正也の親は次のように語っていた。
「本当に驚きました。1年に満たない間に、いろんな人が正也のもとに入れ代わり立ち代わりやってきて変な投資の話を持ち掛けたり、同じウォーターサーバーを何台も買わせたりしたのです。正也は細かい判断能力がないので、毎回かならず騙されてしまう。疑うことなく、言われるままに動いてしまうのです。きっと相手もその特性を知っていたのでしょう」
詐欺をする人間は、逃げ遅れた生き物に群がる蟻のように、みんなで寄ってたかって搾取しようとするのだ。