大統領選に向け、献金集めも順調

虚偽記載という微罪をきっかけに前大統領を起訴に持ちこむニューヨーク検察の手法を見て思い出すことがある。
それは2011年当時、民主党政権内でもっとも首相の座に近いとされていた小沢一郎氏に対し、東京地検特捜部が小沢氏の政治資金管理団体の収支報告書に虚偽記載があったとして、政治資金規正法違反で起訴した「陸山会事件」だ。

ドナルド・トランプ氏と小沢氏を比べることは小沢氏に失礼かもしれない。しかし、虚偽記載をフックに検察が大物政治家の政治的生命に影響を与えるという意味で、このふたつの起訴は酷似している。「陸山会事件」で小沢氏は嫌疑不十分で不起訴となったものの、起訴が響いて首相レースからの撤退を余儀なくされた。

一方のトランプ元大統領はどうだろう。すでに来年の大統領選に立候補し、共和党候補者のトップを独走している。起訴直後のYahoo/YouGovが行った全米世論調査でも支持率52%と、2位のロン・デサンティスフロリダ州知事21%にダブルスコアの大差をつけている。

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さらに米ワシントン・ポスト紙とABCテレビが5月7日に発表した世論調査によれば、2024年大統領選でバイデン大統領(民主党)がトランプ前大統領(共和党)と争った場合、バイデン氏に票を投じると回答したのは「絶対に」と「たぶん」を合わせて38%にとどまり、44%のトランプ氏が6ポイント差で「勝利」する結果となった。

献金集めも順調だ。起訴直後にトランプ前大統領が「今回の起訴はバイデン政権や民主党による魔女狩りだ!」と訴えるや、熱心な草の根トランプ支持者からの寄付が急増し、短期間で44億円もの政治献金を集めたのだ。現状、トランプ元大統領が大統領選びのレースから降りる気配はまったくない。

よくも悪くもスキャンダルとメディア報道がエネルギー源――。トランプ元大統領のそんな体質は今もまったく変わっていない。

文/小西克哉 写真/shutterstock