プロ野球、高校野球では…?
これがプロ野球だとハンデはさらに細かくつく。戦力差やその日の先発ピッチャーなどによって変わるが、つけ方が複雑でこの幹部もわからないらしい。ハンデをつけているのはいったい誰なのか。
「プロのハンデ師がいる。たぶん胴元の上層部とつながってる元プロ野球の選手だな」
配当は「3分負け」「7分勝ち」「丸勝ち」「丸負け」などと分けられ、ハンデもさらに細かく「1半2」「1半3」といったものもある。説明は割愛するが、いずれも胴元が儲かりやすくなる仕組みとなっているらしい。
「1日1000万以上賭ける者もいる。勝った分は胴元に取り置きし、次の試合に賭ける。取り置きは原則1週間。客と胴元とに信頼関係があるから成り立つわけだ」(同幹部)
また、「プロ野球より高校野球のほうが盛り上がる」と語るのは、自身で高校野球賭博を開いたことのある別の幹部だ。
「甲子園の全出場校を8つの枠にランダムに割り振って枠順を決め、優勝と準優勝の枠を予想する。競馬と同じで枠連や単勝はあるが、3連単はない。みんな枠順の紙と赤ペンを持って熱心に予想しているよ」
多くの組でやっているという野球賭博だが、摘発される件数はそう多くはない。その理由を警視庁の組織犯罪対策四課の元刑事は「野球賭博は違法カジノのような物理的な賭場がない。バカラやルーレットと違ってどこででもできる。1試合で賭ける人間も数人から多くても十数人ほど。最近はSNSやオンラインで賭けたりするから、実態がつかめない」と話す。
1口1000円で10口から掛けられるケースが多く、集まった金額の3割は胴元が取るという。
「100万集まれば30万が胴元、70万の掛金で配当が決まる。高校野球はオッズが重要。普通にやったら優勝候補にみんな賭けるから、ハンデをつけて賭場のバランスを取るんだ」(同)
もちろん、ここでも賭けるのは好きな球団や高校ではない。変に情が入れば、それは“丸負け”を意味する。野球賭博をやるヤクザはひいきのチームを作ることさえ許されない。
野球を純粋な気持ちで見るためには、野球賭博から足を洗う必要があるようだ。
取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班