ミライアカリ引退の理由は
コンテンツ制作における事務所との考えの相違か

今回引退したミライアカリも、そんな企業勢の一人だったようだが、どんな立ち位置のVTuberだったのか。

「2017年から活動していたミライアカリさんは、もともと株式会社ZIZAI所属の企業勢でしたが、2019年の同事務所解散後、2020年からバンダイナムコミュージックライブ(以下、バンナム)所属になりました。

彼女はVTuber黎明期を支えた存在、VTuberの始祖としてネットを飛び出してテレビなどでも活躍していたキズナアイさんと並び、“VTuber四天王”の一人と称されていた伝説的な存在です。3Dスタイルを駆使した10分前後の動画コンテンツがメインで、正統派アイドル路線とそこから漏れ出る個性で人気を博し、YouTubeチャンネル登録者数は引退時には70.4万人にまで成長していました」

「毎回台本があった」「私は人形だった」VTuberの始祖・キズナアイの無期限休止、レジェンド・ミライアカリの引退…閉じコン化したVtube業界は、ファンが作ってファンが殺してしまうのか_2

そんなミライアカリだが、今年の3月末に惜しまれつつも引退してしまった。その最後は華々しいものだったが、一方で引退の理由にネットが揺れた部分もあったという。

「ミライアカリさんは引退理由を“運営との価値観のズレ”と語っていました。実際ミライアカリさんは、個人勢からアメリカのVTuberグループ『VShojo』に加入した人気VTuber・ksonさんとコラボをした際に、『動画は毎回きっちりと台本があった』、『コンテンツの企画には関われない』、『私は人形だった』など、長らく秘めていた胸の内を涙ながらに語っています。コラボ動画で語っていたという言葉からは、近年人気を博している“素を出していくスタイル”への強い憧れがあったように思えます」

ネット上では、素を出した生配信スタイルがしたい彼女の要望をバンナムが受け入れなかったことに批判も寄せられていたが、この批判については高橋氏は思うところがあるという。

「確かに彼女のファンからするとそう思うのも無理はないでしょう。ですが、一概にバンナムを責められない部分もある気がします。というのも、ベンチャー企業ゆえにチャレンジングな試みを行えたホロライブやにじさんじとは異なり、バンナムは長い歴史を紡いできた日本を代表する企業が運営するブランド。VTuberがあけすけに喋る“生きた会話”が売りの生配信では、意図せず企業ブランドを傷つけるような出来事も起きがちなので、バンナムはそうしたリスクを避けたかったのでしょう」