日本女子4人目の金字塔

11月、イギリス・シェフィールド。GPシリーズ第4戦のイギリス大会、三原は自身初のGPシリーズ優勝を勝ち獲っている。

鍛錬の賜物か。SPで72.23点を記録して首位に立つと、フリーでも145.20点とトップスコアを叩き出した。

「今までは(GPシリーズで)4位が多く、『このまま4位でいいの?』と自分に言い聞かせて。気持ちを奮い立たせました」

三原はそう話す。直前に2位のアメリカ選手が高得点を出していた。極度の緊張に襲われたが、のちに振り返って「体の状態は一番いい大会」だったこともあり、練習の成果を見せた。

「試合ごとに一つひとつ改善して進む」

その精神で、続くフィンランド大会、三原はSPで自己ベストの得点で2位につける。フリーでも勢いは止まらない。情熱的滑りで130.56点を出し、トップに立った。これで合計204.14点。怒涛の逆転優勝だ。

試合ごとに強さを増し、2連勝でGPファイナル進出を決めた。「集中力の天才」と言われる彼女にとって、試合に出られるだけで突破口になった。リンクに立てる幸せをかみしめた。

2015年末、三原は「若年性特発性関節炎」という難病の診断を受けている。退院後も歩行が困難な状況が続いたが、2016−2017シーズンに復帰し、全日本選手権で3位、四大陸選手権で優勝、世界選手権5位に輝いた。

スケートに向き合う力は峻烈だった。2017−2018シーズン、平昌五輪の出場は惜しくも逃したが、体調を考えたら戦い切ったことが勲章に値した。

しかし無理はきかず、力を使い尽くしたか。2019年に入って体調を崩し、思うようにリンクに立てず、1シーズンの休養を余儀なくされた。そして2020−2021シーズン、リンクに戻ってきた彼女は命を削るように滑った。

「スケートができる喜び」

それを噛み締めながら滑る彼女は、コロナ禍の大会での希望の灯火のようだった。体力の回復とともに、躍進を遂げた。2022年の初出場でのGPファイナル優勝は、彼女のフィギュアスケート人生に対する祝福だろう。

「スケートができることが幸せで。この結果は、今も信じられません」

GP女王になった三原は、そう心境を明かしている。

「正直、メダルを獲れるとは思っていなくて。中野(園子)先生から『(GPシリーズを)1位・1位でファイナルに来たのはあなただけだから、ファイナルも(優勝を)狙っていこう』と言っていただいていたんですが。

自分が今までなかなか表彰台に乗れず、苦しかったことが頭の中に巡り、本当に実現できると思っていませんでした。練習してきたことを、ショートもフリーも出すことだけを考えて、スケートができる喜びを表現し、感謝の思いを込めて、と滑りました」

リンクに神様がいた。同門である世界女王、坂本花織を逆転してのGPシリーズ初制覇だった。日本人の女子シングル優勝は、2018年の紀平梨花以来4年ぶり。村主章枝、浅田真央、紀平に続く4人目となる金字塔だ。