『戦場のメリークリスマス』で表現する自分の色
近畿選手権では、冒頭のダブルアクセルは流麗で、着氷後に足を高く上げた。柔らかい膝や体の反りを使って音を表現。
前回の試合で課題にした3回転フリップもGOE(出来ばえ点)を稼ぎ出した。最後は激しく鍵盤をたたくテンポに合わせ、指先まで艶めかしかった。
「ピアノが流れた瞬間、スッて切り替わる感じで。(曲の)世界観に入れました」
三原はノーミスの演技後に振り返った。
「私の好きな曲のリストがあるんですが、『戦場のメリークリスマス』はそのひとつで、(振付師のデヴィッド・ウィルソン氏に)『これを滑ってほしい』と言われて、すごくうれしかったです。
最初から最後まで好きな曲で、いろいろな情感がこもっていて。その曲にのり、人生の苦しさだったり、つらさや喜びだったり、全部を包んで、見ている方々の心に響く演技ができたらと。曲に込められた世界観を大事に、三原舞依の色を出せるようにしたいです」
彼女は人間の儚さと強さを同時に感じさせる曲を選んだ。
首位で迎えたフリーは、スペインのバレエ曲『恋は魔術師』だった。三原は真紅のドレスに黒の飾りが輝く衣装をまとい、スタートポジションから情熱の世界に入る。
ダブルアクセル+3回転トーループ、3回転ルッツは安定。3回転サルコウは着氷が乱れたが、3回転フリップは成功した。後半はやや消耗が見え、最後のループが2回転になるなど改善点は明らかだった。
「ペース配分がまだ決め切れていなくて。全部を上げて、上げて、だと最後は体力がなくなってしまうので、緩急をつけて強いところ、優しくするところって音に合わせながら」
三原は冷静に振り返っていた。総合201.48点と、2位に50点近い大差をつけ、優勝を飾った。
ステップは力強くなり、コレオの疾走感も出て、ロングスパイラルは壁ギリギリまで広くカバーし、ダイナミックさを演出。堂々と西日本選手権へ勝ち進んだ。
表彰式後、三原は自らを叱咤するようにこう語っていた。
「西日本、GPシリーズのイギリス大会、フィンランド大会と続けて試合があるんですが、予定が詰まっているほうが元気でいられるって考えて。コンスタントに試合に出られる中、そこで出た反省点を活かしていければと思っています。
それでファイナル、全日本まで一歩ずつ前へ進めたら。シーズンはどんどん進むので、しっかりやりたいです」