「お婿さんをもらって」と母からのお願い
家庭の事情が重くのしかかったというのは、医療系メーカーで働き、現在母親と二人暮らしだという佐藤さん(仮名・46歳)だ。
「私が4歳の頃に父が亡くなって、それ以降は母と二人暮らしです。
母は厳しい人で、学生時代は門限があって夜遊びすることはなく、恋愛経験も乏しかったんです。社会人になって初めて恋人ができましたが、それもあまり長くは続きませんでした。
26歳のときの会社の飲み会で、好意を持ってくれた男性から『俺たち、付き合う?』と言ってもらったんですが、その男性が一人息子だということで赤面しながら断りました。
というのも、幼い頃から母に『あなたがお婿さんをもらってこの名字を継ぐのよ』と言われ続けてきたもので……。
30代からは胃がんを患った母の看病や仕事の転職もあって、恋愛どころではありませんでした」
今では75歳の母親が「生きる支え」だという佐藤さん。「いずれ結婚するものだと思っていたけど、それは相手あってのもの。いつ、誰と結婚するという意思をもっと強く持っていればよかった」と寂しく笑う。
今は母親からの「子供はもう無理だろうから、パートナーは見つけたら?」という言葉も重くのしかかっているという。
未婚の女性たちの誰しもが、「結婚する必要性がない」との考えのもと、進んで結婚をしない道を選んだわけではない。キャリア形成、恋愛の挫折、家庭環境……様々なハードルが彼女たちの前に立ちはだかる。“結婚して当たり前”という感覚は、もはや過去の遺物なのだ。
それを“金配り”だけで解決しようとする政府は、あまりに安直すぎるのでは。
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取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班