「政府は独身者に対して冷たい」

総務省の労働力調査によると、夫婦ともに就業者である共働き世帯は増加し、専業主婦世帯571万世帯に対し、共働き世帯は1240万世帯にまでのぼる。にもかかわらず、現実的には女性の家事や育児の負担が重いケースが多数派だ。
その事実を周囲から聞いているからこそ、結婚に二の足を踏む女性もいた。

IT企業で広報として働く川田さん(仮名・43歳)は、大学卒業後にフリーランスとして仕事をし、20代後半から会社員になるという、稀なキャリア形成をしてきた。
30代前半で結婚の機会はあったが、それに本腰を入れる気には到底なれなかったという。

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「自分の遺伝子は残したくないと思っていたけれど…」(川田さん)

「当時の彼とは3年ほど付き合い、お互いの親にも紹介してました。でも私は毎日仕事で必死。いま振り返れば、仕事で評価されることが自己肯定感につながっていたので、彼から結婚の話をされてもその話から逃げていました。

それに、周囲の女友達からは結婚して子供を産んだことで『仕事が思うようにできない』という声もよく聞いて……。
そうこうしているうちに彼氏から『他に好きな子ができた』と言われ、私も愛想が尽きていたので別れました」

そもそも、結婚に憧れを抱きづらい環境で育ったと川田さんは話す。

「小さい頃から母親に『絵を描くのが好きで美大に行きたかったけど、結婚を選んだ』と聞かされていて、『結婚で好きなことを諦める女の人にはなりたくない』と思っていました。

それに、小学生時代にいじめられた経験から自分に対する強いコンプレックスを持ち、『自分の遺伝子を残したくない』という思いもありましたし、もちろん子供も苦手でした。

でも不思議なことに、昨年、子宮摘出の手術をして妊娠ができなくなった途端に、『子供って可愛いな』と思えるようになったんです。だからと言って、いまさらどうにもできませんが……。
今はとにかく、老人ホーム入居用の貯金をコツコツ貯めて、老後に備えています」

川田さんは「こんなこと言うと批判されそうだけど……」と、政府に対しこんな不満も訴える。

「子育て支援ももちろん大事だけど、配偶者控除や扶養控除などの税金の各種待遇がない独身者にとっては、じわじわと迫りくる負担が多いんです。政府は独身者に対して冷たいと感じます」