未山のようなスピリチュアな能力は……ない!
──完成した映画を見た感想は?
坂口 こうやって取材で未山について話していますが、僕自身、100%腑に落ちていないんですよね。この映画は、見る人の状況や気持ちのタイミングによって感想が変わってくるんじゃないかと思います。
お客さんに考える余白を作っているので、いろんな感想が飛び出してくる。それは作品にとって、とても豊かなことだと思いました。
齋藤 曖昧な面白さや曖昧な魅力があるので、それこそ言葉がわからない海外の人が見ても楽しめるというか。見終わった後にこの映画で見た情景が浮かんできたり……。頭や心に残る作品なのかなと思いました。
──ちなみに未山は、そこに存在しない「誰かの想いが読める」青年で、少しスピリチュアルな印象もありました。おふたりがスピリチュアルな体験をしたことは?
坂口 僕は未山的な力やスピリチュアルな経験をしたことはありません。でも、そういう力や現象は信じたいです。あってほしいと思っています。
齋藤 私も全然感じないです。
坂口 そういう不思議な力がありそうに見えるけどね。
齋藤 それすごく言われるんですよ! 何か見えてそうとか。ただ、そういう現象をバカバカしいとは思わないし、霊でも何でも、いてくれていいとは思っています。いい霊ならば、自分についていても別にかまわないですし(笑)。
『サイド バイ サイド 隣にいる人』と『砂の女』の共通点
──齋藤さんは乃木坂46を卒業されましたが、これを機に女優業を本格化させる予定は?
齋藤 いえいえ、そのために卒業したわけではないですし、この作品を撮影したのも乃木坂46に在籍中でしたから。ただ、ファンの方たちには、この作品で私の生存確認をしていただけるかなと。タイミング的にはとてもよかったと思います。
──最後に、おふたりの好きな映画や好きな映画スターを教えていただけますか?
坂口 最近、ライアン・ゴズリング主演の『グレイマン』(2022)を見ました。僕は彼と身長がほぼ一緒なんです(183cm)。ライアン・ゴズリングは40代ですが、体もいいし、アクションもすごいし、芝居もいい。同じような身長ということは、がんばれば自分もライアン・ゴズリングのようになれるかもしれないですよね(笑)。
あの年代であのかっこよさを維持できているのは、夢があると思いました。
齋藤 私は『サイド バイ サイド 隣にいる人』を見たあとに『砂の女』(1964)をもう1回見たいと思いました。近い色や世界観を感じたんですよね。原作者の安部公房が好きで、小説を読んだあとに映画も見たのですが、そのときは暗いしよくわからなくて。
この機会に見なおしてみましたが、やっぱり難しかったです(笑)。
坂口 でもそれって、この映画と『砂の女』が心の中で引っかかり、繋がったということだよね。『サイド バイ サイド 隣にいる人』も見てくださる方にとって、「何だろう?」と心に引っ掛かる作品になれたらと思います。
取材・文/斎藤香 撮影/石田壮一
『サイド バイ サイド 隣にいる人』(2023)上映時間:2時間10分/日本
そこに存在しない誰かの想いが見える青年・未山(坂口健太郎)は、その力で体の不調や心に傷を抱えた人の想いに寄り添い、癒しながら、恋人の詩織(市川実日子)と幸福な日々を送っていた。しかし、高校時代の後輩・草鹿(浅香航大)の存在を近くに感じるようになった未山は、草鹿と再会。同時にかつての恋人・莉子(齋藤飛鳥)とも再会することになり、それをきっかけに未山の過去が紐解かれていく……。
出演:坂口健太郎、齋藤飛鳥、浅香航大、磯村アメリ、市川実日子
監督・脚本・原案:伊藤ちひろ
製作:「サイド バイ サイド」製作委員会
製作プロダクション:ザフール
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
4月14日(金)全国ロードショー
©2023「サイド バイ サイド」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/sidebyside/
坂口健太郎
1991年、東京都出身。2014年俳優デビュー。2016年『64-ロクヨン-前編/後編』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。2018年『シグナル長期未解決事件捜査班』(フジテレビ)で連続ドラマ初主演。近作は『余命10年』『ヘルドッグス』(いずれも2022)など。
齋藤飛鳥
1998年、東京都出身。2011年アイドルグループ「乃木坂46」の一期生オーディションに最年少で合格してデビュー。映画初出演は『あの頃、君を追いかけた』(2018)、2020年『映像研には手を出すな!』で映画初主演を果たした。2023年に乃木坂46卒業。