映画の中の未山は確かに美しかった

齋藤飛鳥が「手札がまったくない状態で臨んだ」映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』。坂口健太郎は「こういう不思議な世界観の作品があってもいいと思えた」_3

──伊藤監督は、坂口健太郎さんの圧倒的な透明感に魅了されてできた作品だとコメントされています。監督から直接言われたことは?

坂口
 監督はそう言ってくださるんですけど、本当の僕は真逆です。すごい大雑把だし、ズボラだし、いつもガハガハしている感じですから(笑)。

ただ、映画の中の未山は確かに綺麗だったと思います。キャラクターの骨格とかディテールが美しかったなと。もちろん監督は未山=坂口として描いてはいませんが、僕からニュアンスを引っ張り出して作り上げたキャラクターだと思うので、自分としても新たな発見でした。そう見られていたんだなと。

──齋藤さんは、坂口さんとの共演はいかがでしたか?

齋藤
 お会いする前に繊細な人というイメージを抱いていたのでギャップは大きかったんですが、明るくて楽しい一面がありながら、すごく柔らかい雰囲気をまとっているんです。

それは未山というより、坂口さんの魅力だし、そこに惹かれる方がたくさんいるんだろうなと思いました。だから未山は坂口さんじゃないと演じられないし、坂口さんだからこそ成立したと思います。

──坂口さんは莉子を演じた齋藤さんのお芝居を見て、どう感じられましたか?

坂口
 莉子は暗いものを抱えていて、元恋人の未山といるときも、草鹿(浅香航大)といるときも、常に負荷のかかる何かを背負っている女性で。

セリフが少ないから仕草や表情などで表現しないといけないですし、飛鳥ちゃんは難易度の高いことを求められていました。でも撮影中は、「莉子だ」と思う瞬間が何度もありました。それは本人が持っている個性、魅力がそうさせていたと思います。

齋藤飛鳥が「手札がまったくない状態で臨んだ」映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』。坂口健太郎は「こういう不思議な世界観の作品があってもいいと思えた」_4
©2023「サイド バイ サイド」製作委員会

──齋藤さんは、莉子を演じるにあたって、坂口さんがおっしゃっていたことは意識していたんですか? 

齋藤
 「そういうふうに見られていたのか」という感じです。どうやったらお芝居が上手になれるのか、莉子になれるのか、その手法が私にはわからないんです。お芝居の経験も浅いですし、手札がまったくない状態で臨んだので、「とにかくやらなくちゃ!」と思って演じていました。正直、いいように表現してくださったんだと思います(笑)。

キャストもスタッフも模索し続けた撮影

──先ほど、余白のある役でいろんな捉え方ができるキャラクターだとおっしゃっていましたね?

坂口
 監督の頭の中を読み解いて演じないといけなかったので、常にアンテナを張り巡らせている状態でした。でも、この作品はわかりやすく完結する作品ではありませんし、こういう不思議な世界観の作品があってもいいなと思ったんです。

どうやって演じたらいいか戸惑いながら向き合ったことが、この映画の曖昧さや透明感につながったのかもしれません。

齋藤 私も莉子が何考えているのかまったくわからなかったけど、わからなくてもいいとも思いました。

そもそも、自分がこの作品に色をつけたり、味をつけたりすることはできないと思ったんです。坂口さんや実日子さんがどう演じられるのかを見ながらお芝居できたことは、とてもいい経験になりました。