想像を絶するほど大変な国際霊柩送還士の仕事
──米倉さんはAmazon Original『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』の出演依頼がある前から、原作のノンフィクション「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」(佐々涼子・集英社刊)を読んで感銘を受けていたそうですが、原作のどこに惹かれたのでしょうか?
原作が出版されたのは9年前で、私が読んだのもその頃です。いつもは結構忘れっぽくて、読み終わると忘れちゃうことが多いんですよ(笑)。「今話題になっている小説の◯◯、私読んだっけ?」とか、読んだのに覚えていないことがあるのですが、この原作はしっかり覚えていました。だから余程、心に刺さったノンフィクションだったんだと思います。
まず国際霊柩送還士という仕事に驚きました。海外で亡くなった日本人の方や、日本で亡くなった海外の方のご遺体をご遺族のもとに運ぶというお仕事なのですが、この仕事がとにかく大変なんです。ご遺体を搬送して、体を綺麗にしてあげて、お洋服を着せて、お化粧をしてお運びする。
ご遺体は、生きているときよりも重く感じますから、さまざまな作業のすべてが力仕事でもあるのです。それを少人数でこなすんですよ。そのメンバーの中に女性がいるというのにも驚いてしまって……。
──海外で亡くなった方は、国によって扱いが違うこともあるようですね。
そうですね。正直、海外から着いたご遺体にお洋服を着せて、お化粧をしてご遺族の元にお届けするだけでも仕事としては成り立つんです。でも、私が演じた伊沢那美のモデルとなった木村利惠さんは、ご家族にご遺体をお届ける作業にものすごく気持ちを込める方なんです。
作業の最中は、ご遺体に生きている人に対するように話しかけるし、ご遺体とご遺族の最後のお別れをきちんとさせてあげようと懸命に努力する。そんな利惠さんの姿勢に感動しました。
──米倉さんは木村さんにもお会いしているんですよね。
とにかくパワフルな方で、私より何倍も個性的な方です。最初は厳しく怖い人かなと思ったのですが、話してみたらフレンドリーで、質問にはなんでも答えてくださるし、いつも本音で語る方。もしかしたら本当は私たちと同じで臆病なところがあるのかもしれないけど、そんな一面は絶対に人には見せないという印象がありました。全てのことに対して100%で向かっていく人で、中途半端なことは絶対にしない方だと思います。
一見、死を扱う仕事に従事しているとは思えない、華やかな印象の方なんです。でも「これは私の仕事、私のためにある仕事です」と、とても誇りを持って国際霊柩送還に携わっていらっしゃる。仕事に誇りを持つことは素晴らしいなとも思いました。