役者は40代でも、キャラクターは20代フリーターのまま
――『THE3名様』のように漫画では登場人物たちの年齢が長期シリーズでも変わらないことが珍しくないですが、ドラマだと俳優さんは否応なしに成長します。12年分の歳を重ねているわけで、新作のお話が出たとき、そこをどうクリアするのだろうと気になりました。
石原 だから、最初の企画段階では彼らに子どもがいるっていう案も出たんです。成長した『THE3名様』をやろうかって。でも、僕はやりたくなかったんですよ。
隆太さんって、1990年代のメロコアが今も好きですよね。NOFXとかHi-STANDARDとか。僕も未だに大好きなんです。例えば、彼らが「自分たちも歳をとったから音楽性を変えます」って言い出したら絶対イヤですよね。
佐藤 あーわかります! 素晴らしいたとえですね。
石原 ファンを裏切ることになるわけですよ。でも、彼らはずっと同じ音楽をやり続けた。あの人たちを見て、自分もやらなきゃと思ったし、役者さんたちも絶対に演じてくれると思ったから、12年ぶりの新作でも設定を変えなかったんです。
――役者は40代でも、キャラクターは20代のフリーターのままにしたと。
佐藤 今のお話は初めて知りましたけど、僕も変えるつもりはなかったですね。
――実際に新作を観て、彼らが何も変わっていないことに驚きました。
石原 「あいつら、まだあのファミレスにいるのか!」っていう(笑)。
――しかも、ちゃんと3人が昔のままに見えるんですよね。これは皆さんが特別に若く見える俳優さんだからなんでしょうか?
佐藤 そんな事ないと思いますけど(笑)。でも、確かにあのテーブルでの3人を見ると、昔からあんま変わってないですね(笑)。
石原 それが役者の力ですよ。この前、映画『シャイロックの子どもたち』を観たんですけど、あの中の隆太さんは『THE3名様』と違って、ちゃんと歳を重ねた役者として出ていましたよね。それがすごいなと思って。これはぜひ聞きたかったんですけど、子どもが家の中を走るときに、「滑るぞ」って注意するじゃないですか。あれ、アドリブですか?
佐藤 多分、アドリブですね。
石原 あそこがすっげえリアルに感じたんです。「転ぶぞ」じゃない。「滑るぞ」なんです。たしかに、自分も子どもにそうやって言うよなって感じがあって……。『シャイロックの子どもたち』を観て、隆太さんが役者としてすごく成長されているのがわかりました。だから、本当は僕も成長しなきゃって思います。いつまでも同じコマ割りの漫画じゃダメですよ(笑)。